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「族譜」

族譜(チョッポと読むらしい)」は、私に韓国映画の扉を開いた作品です。
朝鮮半島が日本に併合されていた時代、
「創氏改名」を迫られた由緒ある家の家長と、
役所の職員として半島に住む日本人青年との話です。
原作は日本人の梶原季之。
監督は韓国のクロサワ的存在、林権澤(イム・ゴンテク)氏です。
「何でうちは日本の苗字にしないの? 学校でうちだけだよ」
と無邪気に訴える孫の言葉に、悲しく微笑む家長の表情。
創氏改名をさせる立場にありながら、
何とか由緒ある姓を残す手だてはないかと奔走する日本人青年。
読み方だけを変えて、とにかく姓を残せないかと上司にかけあうも、
「日本にはこんな漢字はない!」と一掃されてうなだれてしまいます。
家長はとうとう姓を日本風に変える決意をしますが、同時に
「長く続いた族譜(家系図のようなもの)に終止符を打つのは、
ご先祖様に申し訳が立たない」といって自ら命を絶ってしまうのです。
私がこの映画でもっとも震撼としたのは、ラストシーン。
家長の野辺送りを遠くから見守る主人公の後ろ姿に、テロップが流れます。
数年後に日本が負けて戦争が終わり、その後、創始改名以前にすべての族譜は戻された、
というものです。
家長の死は一体何だったのか?
何のために命を捨てたのか?
主義主張を守り抜く美しさを描きながら、
最後にその虚しさをつきつけた、林監督という人に
私はものすごく惹かれました。
以後、私の「林詣で」が始まります。
ずい分たって韓国の留学生たちと会う機会があり、映画の話になりました。
みな「林監督」のことは知っていましたが、「族譜」は知りませんでした。
日本人の原作ということで、韓国では上映されていなかったのです。
そんな環境で、これを撮った監督の心とは?
ますますのめりこむ私でありました。
1978年製作のこの映画は、日本でも上映されていないそうです。
私が見たのは、NHK教育テレビででした。
同じようにNHKで見た人のHPがあったので、改めてびっくりしてしまいました。
その人は1983年に見たらしいのですが、私もその時かなー? 
その後朝日新聞の週末版にこの映画が特集された時の記事は、
大事にとってあります。
林権澤監督については、映画評論家・佐藤忠男氏の著書
韓国映画の精神
がオススメです。

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