「白鳥の湖」というバレエを観に行く、と思ってはいけない。
あくまで「アクロバティック」白鳥の湖。
チャイコフスキーの緻密でドラマチックな曲・曲・曲に乗って、
次から次へと鍛え抜かれた雑技が飛び出す。
これはエンターテイメントの極致ともいえる雑技団ショー。
昨日、WOWOWでやっていたのを見て、感激いたしました!
前半は「王子の無聊を慰めるため、お抱えの道化が諸国を巡る旅に誘う」
という筋立て。
くるみ割り人形のクララよろしく、
異国情緒に溢れた様々な場面が次から次へと始まり、息つくヒマもない。
それぞれでソロをとった男たちは、
ラート、一輪車、ジャグリング、トランポリン、綱渡り、
どれをとっても一流であり、絶対に失敗しない。
音楽に乗った美しい動きは、バレエとは違ったって感動ものだ。
チャイコフスキーの音楽が、これだけの動きを作ったかと思うと、
つくづく彼の凄さを思い知る。
二幕の「白鳥と王子の出会い」などにはスタンダードな振り付けもあるものの、
基本的にソロの踊りはまったくなし。
コールド・バレエも「スケートスワン」と銘打って、
ロングドレスに脚元を隠し、バレエでの勝負は敢えて捨てている。
前半、何もしないでぐるぐる諸国を歩いていた王子は、
しかしオデットと組んでから本領発揮。
それほどマッチョな男ではないのに
片足のトゥでアラベスクのポーズを保つオデットを
肩で、掌で、そして頭に乗せてびくともしない。
その安定感と美しさの前には、
白鳥と王子の悲恋などどこかにいっちゃっても全然文句なし!
暗転からパッと目にする舞台装置の華やかさも素晴らしく、
狂言回しの道化を使った場面展開、そして早変わりも見事。
演出のジェオ・ミンの力は大きい。
純粋な意味でのクラシックバレエではないけれど、
白鳥のほか、海賊、くるみ、その他様々なバレエのエッセンスをうまく吸収させて、
すばらしい舞台を作った。
それに応えるキャストの才能にも、拍手。
すでに30ヶ国で上演しているという。
昨年に引き続き、また来日が予定されているらしいので、
「中国版シルク・ド・ソレイユとチャイコフスキーの合体」を
どうぞご堪能ください。
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