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「三月花形歌舞伎」(夜の部)@新橋演舞場

染五郎と菊之助の「二人椀久」が観たくて行きました。
美しかったです。
息がぴったりで、ゆっくりとたゆたう二人の動きにくぎ付け。
富十郎丈と雀右衛門丈で戦後に復活した新舞踊ということで、
途中、「あれ? ずいぶん斬新な動きだな~」という部分あり。
若い2人だけれど、
かえってそういうテンポの速いところは趣がそがれた感がありました。
踊りって難しいな~。
誰でもできそうな振りにこそ、神が宿らないと美しく見えないのね。
傾城松山に入れ揚げた末に発狂、座敷牢に幽閉された豪商の椀屋久兵衛の
一夜の夢に現れた松山との幻の逢瀬を描いたものですが、
これを見ながら、
「ああ、ジゼルやな…」
と思ったわけであります。
アルブレヒトの夢に出てきたジゼルと踊る二人。
そして、松山の姿は消え、久兵衛は夢と知る……。
この、「夢と知る」のところの染五郎が素晴らしかった。
仰向けに倒れているのだけれど、
すべてを知ってぱたりと手から力が抜けるときの、瞳の中の虚無。
素敵でした~。
もちろん、菊之助も。
この人の踊りには、重力を感じます。
そして緩急のキレのよさがありながら、真綿のような温かい空気が肌を覆っている。
好きです。
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もう一つ、「一條大蔵卿」
この1年で、勘九郎、歌昇、染五郎と、初役三連発観ていますが、
それぞれに味があって面白いですね。
もっとも私の好みだったのは、歌昇だったかもしれない。
勘九郎の大蔵卿は、
「おバカ」加減というか、「おバカ」を表すシチュエーションの構成が抜群で、
これってやっぱり勘三郎譲りかな~という感じ。絶妙の間合いで観客を沸かせ、
物語の中でもそういう「おイタ」をする殿様に翻弄される感じがよく出ていた。
でも最初からちょっと切れ過ぎというか、種明かし的な表情がはっきりしてるし、
最後ヒーローで終わる感じです。
歌昇の大蔵卿は、「おバカ」というより「凡庸」「無能」な殿様で、
おつきの人たちが「おかわいそうに」と同情しちゃうような殿様。
振り回されるというより「ものの数に入らない」「シカトでOK」的な殿様。
だから、
周りの人は、彼がそばにいても平気で悪口言ったり、大切なことも喋っちゃったりしちゃう。
それを全部わかりながら、「全然わからない」「興味ない」ふりを20年以上してきたという、
その凄みを最後に振り絞る歌昇の大蔵卿が、一番好みです。
(まあ歌昇の、というより、吉右衛門の踏襲ですが。)
彼の大蔵卿を見たときは、
「大蔵卿と常盤御前の夫婦って、ほんとになるべくしてなった運命の夫婦だな」と思った。
本心を隠したもの同志、そうと分かればその後の人生も少しは明るくてよかった、と、
心から安心したものです。
染五郎は、同じ吉右衛門から学びつつも、
いわゆる「バカ殿」に徹していて、前半は正直「ここまでやってどーなの?」っていう感じ。
でも、ぶっ返ってからは大蔵卿の忸怩たる思いを吐露して見ごたえあり。
彼のよかったところは、
「どんなことをしても生き延びてやる」
「生きて生きて、源氏が天下をとるところを見届けてやる」という執念のようなものを
よすがに生きていることがよくわかるところ。
「武士道とは死ぬことと見つけたり」という言葉があるくらい、
何でも死んじゃおうっていう武士の世の中に、
こういう生き方を宣言して「かっこいい」と思わせるところがすごい。
勘九郎大蔵卿の
「ほんとはこんなにすごいんだぞ。今までの、あれは仮の姿だぞ」っていうカッコよさとは
ちょっと一線を画してる。
染五郎大蔵卿は
「こんなぶざまな生き方こそ、ほんとの男の生き方だ!」っていう
運命受容型、自己肯定型、むき出しのカッコよさなの。
いろんな人の見比べは、本当に楽しい。
彼らがこれからお芝居を重ねていく間に、また変容していくのを見守るのもうれし。
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昼の部は、都合がつかずに見られませんでした。
松緑丈の「暗闇の丑松」ものすごく評判がよいです。
観たかったな~。
丑松のブロマイド、1枚買ってしまいました。

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