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「歌舞伎の歴史」

それが。
歌舞伎関連の本としては、これまでに
「かぶきロード」と「歌舞伎の世界」を紹介していますが、
岩波新書の「歌舞伎の歴史」は
ものすごくダイナミックに歌舞伎のことがわかる本です。
岩波新書、ということで、身構えないでくださいね。かなり読みやすいですから。
まず、
歌舞伎の最初は出雲の阿国の…という通説をそのままなぞらず、
今の歌舞伎のもととなったのは、もう少しあとから、と位置づけています。
では何を以って歌舞伎というか。
キーワードは「両義的」「ヤツシ」「狂言」。
男であって女であったり、
悪であるけど善であったり、
あの世のものだけど今の世にでていたり、
武士であるけど商人に身をやつしていたり、
本当は金持ちだけど、今は勘当の身だったり、
泥棒だけれど義賊だったり、
身のヤツし方はいろいろだけれども、
二つの情に心が引き裂かれることで生じるエモーションは、
誰もが感情移入でき、カタルシスを呼ぶ。
時代の要請によって形を変えながら、
歌舞伎は常に「引き裂かれる」激情を描いて進化してきた。
「劇」とは「劇(はげ)しい」感情をいう、というくだりは、
なるほど、と思ってしまう。
もう一つ驚くのが、あらゆるものを吸収し取り込む力。
人形浄瑠璃との持ちつ持たれつの関係もそうだ。
浄瑠璃の、文語のト書きを歌舞伎では、口語でセリフに書き換て取り込んだ。
明治に入ってからは、フランスのアカデミー・フランセーズに学んだりして、
さまざまな演劇を吸収しながら今の歌舞伎がある。
ワイドショーのように、ニュースを劇化するのに
名前をちょっと変えてフィクションにした時代もあり、
「事実に即せ!」とお上から言われれば元に戻したりもする柔軟さも持っている。
上方では筋のしっかりした合理的な話が好まれ、
江戸では派手なシーンがバンバン続くのが好まれ、
いつしか二つが影響しあっていく、など、
時代を彩った名作のあらすじや、それを演じた名優たちの評判も含め、
読み進むほどに歌舞伎が体にしみこむようだ。
あーーーーーー、行きたい、歌舞伎座。
演じられなくなった古い演目を復活させたり、
野田秀樹に新作を作らせたり、
シェイクスピアを歌舞伎にしたり、
小屋がけしてみたり、
今の歌舞伎の人々も、常に「変化」を心がけています。
歌舞伎=伝統、などと、ひな壇に飾っているのは、
歌舞伎を知らない私たちの方ではないでしょうか。
心の中の激情を舞台の上に繰り広げてくれる歌舞伎について、
私たちはもっと知っておくべき。
この前、團十郎さんも言ってました。
「所詮歌舞伎は遊びですから楽しむのが一番、
 ただ、
 ちょっと勉強すると、もっと楽しめますよ」
楽しむために、
この「歌舞伎の歴史」そして「かぶきロード」「歌舞伎の世界」
強く、強く、おすすめいたします。

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