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Kバレエ「くるみ割り人形」の3年目


熊川哲也 くるみ割り人形【PCBX-50844】=>10%OFF!熊川哲也 くるみ割り人形
クリスマスの時期になると、
どのバレエ団も「くるみ割り人形」をやります。
Kバレエも、今年で3年目。
いろんな「くるみ」を観た中で、私が一番好きなのは、
サー・ピーター・ライト振付の、バーミンガム・バレエ版「くるみ割り人形」
…だった、んですが、
だんだん、どんどん、Kバレエの「くるみ」が好きになってくる。
今日は東京文化会館5階中央1列目という、すばらしい席で、
舞台が、まるで模型かジオラマかっていうながめ。
熊川が「くるみ」を新しく振り付ける時にまず作った模型の中に、
生きた人形が動いているみたい!
神の目線で舞台を眺めていました。
このプロダクションは、とにかく1幕がいいんです。
ドロッセルマイヤーがクララの家に入り込むそのマジックが
舞台装置と絡んでスマートに進行するし、
何より、人形を使って「ネズミにされてしまったマリー姫」の物語を
子どもたちに見せる場面が秀逸。
Kバレエスクールのエリート5人が、
それぞれ王、女王、ネズミの王、くるみ割り、マリー姫の人形役を踊るのだけど、
「くるみだし、クリスマスだし、子どもを出してもいいよね、にぎやかしぃに」みたいな
オマケ出演ではありません。
大人顔負けのきっちりした踊りと演技で、すでにプロの姿勢。
観客を引き付ける力を持っていましたね。
私はオペラグラスで「人形らしい動き」も「ネズミにされてしまった嘆き」も
しっかり拝見させていただきました。拍手!
「クリスマス・パーティーではしゃぐ子どもたち(こちらはオトナのダンサー)」の様子も
とても自然に表現されている。
踊る人形たちが舞台ごと退出する時、男の子たちは好奇心おさまらず、ついていっちゃうし、
女の子はプレゼントの抱き人形に夢中で、そんなのどうでもいいって感じだし。
子どもたちだけじゃない。
父親たち6人の男性で踊るところで、ふと見ると後ろの列の右の人、全然ついてってない!
……と思いきや、飲みすぎてヘロヘロで、踊ったら足がフラフラっていう設定なんです。
帰り支度の客人たちも、それぞれになごりを惜しんだり、夫妻で愛を確認したり、
帽子を落として拾ったり、子どもをせかしたり、いたずらしたりと
本当に芸が細かい。
すべての人が、役になりきって動いている。
夜、クララが意を決して時計の中のフシギの世界に飛び込むと、
クリスマス・ツリーがガーッと大きくなるのは、
Kバレエの「くるみ」の見所なんですが、
ここだけは、天井桟敷みたいな上からじゃなくて、
クララの目線で、1階の、前の方で見るのがもっとも迫力あるんだな、とわかりました。
私がこのプロダクションで最も心奪われるのは、
雪の女王の場面直前の、場面展開です。
ネズミと戦って傷ついたくるみ割り(本日は輪島拓也)と、
クララ(副智美)、ドロッセルマイヤー(スチュワート・キャシディ)のパ・ド・トロワが、
まず青い幕が一気に下りてきて、その前で踊られる。
風とともに空を翔けるかといった、スピーディな展開。
美しい天使のような合唱の声とともにたなびく青い幕は、
音楽がハープの響きに変わると、今度はそれが切って落とされ、
その向こうに、真っ白い雪の世界が…。
ため息が出るほど幻想的な、静寂の銀世界の出現です。
チャイコフスキーの音楽にマッチして、もう、たまりません!
ここからの、いわゆる「白いバレエ」もよく出来ています。
最初の年、
雪の王と王女は輪島拓也と松岡梨絵で、ものすごく切れ味のいいパ・ド・ドゥを踊り、
その後二人とも主役級に抜擢されてプリンシパルやファースト・ソリストに昇格しました。
今日は遅沢祐介・樋口ゆり。
なかなかよかったです。
でも今日は、白いコールドバレエに、新たな感動を覚えました。
今までは1階席で見ていたのであまり気に留めていませんでしたが、
今日は高いところからということもあり、
結晶が次々と形を変えるごとくの動きがすべて見え、工夫のしどころがよくわかりました。
コールドの踊りもシンクロ度抜群でした。
二幕目は、いろいろな踊りを楽しむ趣向。
アラビア人形の踊りは、妖しい雰囲気を醸し出し、いつも目をひきます。
今季ファースト・ソリストになった浅川紫織も、この踊りで頭角を現した一人です。
今日の柴田有紀も、喝采を浴びていました。
二人の男と一人の女の踊りですが、今日初めて、オンナを取りあう関係なんだとわかりました。
遅沢さん、マイムや表情がはっきりしていて、よかったです。
いいことばかり書きましたが、
「花のワルツ」のビャンバ・バットボルト、どーしたの??
回ってもはみ出る、リフトするとタイミングずれる、
もう、女性を落としちゃうんじゃないかと思って、かえって彼のところばかり見てしまいました。
足がしっかり地についていない感じでしたね。
急遽の役だったのかな?
急遽、といえば、
今夜は本当はマリー姫が東野泰子さんだったんです。捻挫で降板。
松岡さんに続き、東野さんまでリタイアです。
ケガ人が続出していることは、とても気になります。
どこかで無理があるのでは?
たしかに、ケガ人が出れば出るほど、残った人の負担は大きくなりますからね。
とにかく、お大事に。
その代役の長田佳子さんが、本当に素晴らしいプリマぶりを見せてくれました。
特に、最後のグラン・パ・ド・ドゥ。
肩から手首、指先に至るラインのしなやかさは、一流の証。
やんやの喝采を受けていました。
Kバレエ立ち上げからずっと女性のトップを支えてきた長田さん。
いつでも、何でも、任せなさい!という底力を見せてくれました。
輪島さんも、王子の風格をふりまいて、きっちり踊りました。
ピッと伸ばした腕が、脚が、ぶれません。
踊りも大きくなって、とても見栄えがしました。
惜しむらくは、一幕など、お面をかぶったくるみ割りの時の動きが
ちょっとおとなしすぎた。
ネズミとの戦いの場面などは、もう少しオーバーすぎるくらいでちょうどいいのでは?
顔の表情で演じられないって、難しいんですね。
あと、
最後のグラン・バ・ド・ドゥの話に戻りますが、
リフトの時に女性のチュチュを腕に巻き込んでしまうこと。
きれいにリフトするっていうのも、いろいろ気をつけることがあるんだな、と思いました。
その点、キャシディのリフトはさすがです。
副(そい)さんが小柄とはいえ、片手でウェストを抱え込んで、それから両手で支える。
片手でひょい、片手でひょい、
そのなめらかな動きに驚嘆!
キャシディのサポートは、女性を美しく見せます。
何の演目で見ても、素晴らしいの一言に尽きますね。
福田一雄さんの指揮は安心して聞けるし、
文化会館の天井近くにいると、音も下から湧き上がってくるようで、
オーケストラも楽しませてもらいました。
クリスマスには、チャイコフスキーの「くるみ」。
来年も、絶対、観に行こうっと。
今年も、まだ今日2回、公演があります。
きっと感動すると思いますよ。
この演目は、熊川がいる、いないよりプロダクションの力です。
休憩入れても約2時間とコンパクトなので、
お子さんも絶対喜びます。
ほんとのオモチャの国へ、クララと一緒に、どうぞ!
*上記のDVDは、1年目の舞台を録画したもの。
 2枚組で、メイキング映像には、舞台装置のデザインへの参画、衣装選びなど、舞台裏の様子や、
 熊川がネズミの王様に動きをつけるところなど、稽古の様子も入っていて、
 熊川が何にこだわりながら製作をしているかが見えてきて興味深いです。

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