今年で7年目を迎える「Downtown Follies」。
男女各2名、計4人で構成される、ミュージカル・レビューだ。
単に有名なミュージカルを断片的に見せるだけでなく、
流行の笑いあり、早変わりあり、ミステリーあり、タップあり、歌謡ショーあり、と
「この4人でなければできない!」と思わせる作りになっている。
多くのミュージカルに演出・台詞作り・翻訳で関わってきた高平哲郎の
すこぶるてだれの構成を、
実力派のミュージカルスター4人がパワー全開で魅せまくる。
歌の島田歌穂、タップの玉野和紀を中心に、
ほぼレギュラーの吉野圭吾と、今回6回目にして初参加の宝塚出身・香寿たつき。
4人のコラボレーションが絶妙で、
皆こんなに芸達者だったかとあっけにとられるほど。
今回のハイライトは
ミュージカル「南太平洋」をもとにした「実録・南太平洋」。
香寿たつきが「虹組」と称して久々の「男役」に戻る。
その前の場で歌った笠置シズ子メドレーの「ジャングル・ブギ」を
「女性」としての艶っぽい歌声で聞かせた香寿だが、
「男役」となれば、また別物。
朗々と響くケーブル中尉としての歌い方もまた、観客を大いに魅了した。
ヅカメイクのような長いつけまつげや目張りはないのに、
そこにいるのは、まぎれもなく、「宝塚の男役」。それも、トップ!
まさに水を得た魚、
これぞ長年舞台の中央に建ち続けてきた者だけが持つオーラである。
しかし、「彼」だけがすごいわけじゃない。
香寿に伝授(?)されたか、男役に挑戦した島田も、
女になって「ハッピートーク」や「バリ・ハイ」を歌う吉野や玉野も、
この人たち、いったい何種類の声が出せるの?というハイレベルなパロディなのだ。
その「七色の歌声」は、
後半、「コーラス・グループ・メドレー」で遺憾なく発揮される。
1970年代の和洋ヒット曲を中心に、なんと13曲!
女性二人によるザ・ピーナッツの「恋のバカンス」は、
ぜひ「だんだん」に出ていたマナ・カナに聞かせたい。
圧巻は、
女性三人(?)のシュープリームス「Stop in the Name of Love」から、
女装三人(?)の矢島美容室「ニホンノミカタ」そして
男性三人(?)の羞恥心「泣かないで」へとたたみかけるところ。
誰がアフロヘアで登場するかは、見てのお楽しみだ。
この部分に限らず、
早変わりの衣装(十川ヒロコ)のセンスのよさは抜群。
そして最高の音楽性で、
ただの「ものまね」では終わらせず、
曲のもつ力に気付かせてくれる。
最後はアバの「Dancing Queen」だ。
最初の「ミスター・サマータイム」(サーカス)とともに、
男女各2人のコーラスの醍醐味を、正攻法でたっぷりと。
香寿と吉野によるタンゴもよかったけれど、
ダンスでもっとも光ったのは、やはり玉野和紀のタップ。
それも扮するのが
「道頓堀から引き上げられたカーネルサンダースおじさん」である。
あのかっこうで地面に横たわっていると、赤い靴を履かされる。
すると、ラベルの「ボレロ」が聞こえてきて、
「赤い靴」は、カーネルの意思と関係なく、タップを踊りだす……という、
この筋書きがすごい!
そして、自ら踊っているはずなのに、靴に踊らされているように見せる
玉野のテクニックに脱帽だ。
それにしても、
島田歌穂という人の引き出しの豊富さには、
圧倒された。
K姉妹のお姉さんになって、お色気を振りまいたかと思えば、
メガネをかけた小学生の男の子にもなる。
落語家にもなる、男役もできる、
こまどり姉妹も歌えば、
バーブラ・ストライザンドの「The Way We Were」を熱唱する。
そのどれもが魅力にあふれている。
七色の歌声のほかに、七変化の演技力も加わって、
役者というものの精進と奥深さを感じずにはいられなかった。
「よかった」ところを全部並べて書くのには、巻物が必要。
ていうか、全部書いたらお楽しみが半減。
あの「衝撃」を肌で感じてもらいたい。
休憩なしの2時間半ぶっ通し。
その上、
青山円形劇場は非常にこぢんまりした会場で、
帝劇などでおなじみの有名どころが、
ほとんど同じ目線で語りかけてくるんだからたまらない。
絶対見て損のないステージだ。
東京・青山円形劇場で、4/19(日)まで。
その後、札幌・橋本・神戸・浜松・京都と回る予定。
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「Downtown Follies Vol.6」
- ミュージカル・オペラ
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