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「ミス・サイゴン」2回目

行ってまいりまいした、「ミス・サイゴン」
1回目はソニンと藤岡正明という、初演の二人を見たくて行きましたが、
今回は井上芳雄、新妻聖子という再演組です。
不可思議なほど、前回とはまったく違う愛の物語を感じた。
井上クリスの腺病質な感じは、「悩んでいる」を通り越して、ほとんど壊れている感じ。
そのクリスが見つけた、最後の希望・キム。
彼女を目にしたその瞬間から、クリスはキムに恋をしていた。
キムを愛したクリスのはしゃぎようが、ものすごくリアル。
また、アメリカに帰って、キムと子どものことをどうやってエレンに話すか迷うところ、
バンコクでエレンに責められ、またもや失敗した、と崩れ落ちるところなど、
綱渡りをするようにして生きてきたクリスの辛さが伝わってきた。
対する、新妻キム
まさに「掃き溜めに鶴」のオーラ。
彼女だけが「特別」であり、だからクリスがみつけた。
納得の品のよさだ。
姿かたちだけではない。
歌もまた、絶品。
特に子どもを産んでからのキムの歌を聞いていると、これぞ歌姫、と体が熱くなる。
ソニンが体の中に憤怒と激情をためこんで生きていたとすれば、
新妻は懐の深い愛情に満ち溢れていた。
「生まれたくなかったのに、生まれてきた子」とタムに語りかけ、
だからお前のために「命をあげよう」というくだりの中に、
すでに「自分のために生きる」という選択肢を捨てた人間の強さとしなやかさを見た。
だから、
クリスに抱かれて死ぬ最期も、
この世への心残りは何もなく、やることをすべてやったという穏やかさが
しっとりとゆっくりとこと切れる場面に集約されていた。
トゥイの泉見洋平は、相変わらず血走った目で熱演。
というか、
鬼気迫るほどの狂気の裏にある200%の純愛に、胸がつまり、切なくなる。
収容所でやっとキムをみつけ、
「二人は結ばれるのが宿命だったんだ」とやさしい表情で迎えようとするトゥイには、
何とか希望をかなえさせてあげたい~!と思ってしまうほど。
「もう遅い(子どもがいるから)」とキムも言っている。
もし、タムという存在がなかったら、二人は結婚していたかもしれないね。
子どものために撃ち殺してしまったトゥイを掻き抱き号泣するキムに、
ソニンのときは、「なんで抱いたりするの?」と思ったけど、
今回はわかる気がした。
タイミングが悪く、気持ちが行き違ってしまった二人だけど、
同じように傷つき生きてきた幼なじみ同士、どこかではつながっていたのかもしれない。
鈴木ほのかのエレンもよかった。
特に、キムとクリスの恋愛が遊びではなかったと知って胸をかきむしるところ。
シルビアのエレンは、どちらかというと、すべてを飲み込んでクリスを支えようという
理性が勝ったエレンだったけど、
ほのかエレンは、もっと生々しかった。
「かくしごとが、おおすぎる・・・」と歌うところが、これほど胸に迫ったことはない。
坂元健児ジョンも、岸さんとまったく違う印象。
ジョン、けっこういい人じゃん。
今回は、彼のお説教に愛を感じて、説得されてしまったよ。
バンコクでキムに会って、クリスに妻がいることを何とか伝えようとするけど、
キムの矢継ぎ早の質問にたじたじとなり、
「言い出せない・・・」とうつむくところには、誠実ささえ感じた。
そして、別所哲也のエンジニア
失礼ながら、まったく期待してなかったんです。それが・・・
いい!
橋本エンジニアが軽妙洒脱だとすれば、
別所エンジニアは大柄でバタ臭くて、どちらかというと、市村エンジニアを継承してる。
橋本さんのは、世渡りがうまそう、
別所さんのは、貧乏くじばかり引いてもがいている、そんなエンジニア。
「あいのこ」と言われたときのエンジニアの顔が忘れられない。
「革命の世で生き延びるには~♪」のところも、身につまされ、ちっとも笑えない。
本当に、どんなことして生きてきたの?
大変だったよね。
がんばって命をながらえているよね。
そんなふうに胸が熱くなる。
ホーチミンの時代になってからの演技と歌は冴えに冴え、
「アメリカン・ドリーム」は圧巻。
ゴージャスさと胡散臭さに、この世の憂さはすべて吹き飛んだ!
いいわ~。
市村、橋本、別所ときたから、筧さんのエンジニアも見てみたくなった。
もう一回いくべきかなー。
迷いだしたガムザッティでした。
*私が行った日は、トークイベントがありました。
 その内容については、明日また書きますね。
 新妻さんが歌を披露したり、とってもオトクな一夜を過ごしました。

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