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「パンドラの鐘」

野田秀樹の脚本を、野田自身と蜷川幸雄とが演出を競い合い、
同時期に上演するというスゴイ企画がありました(1999)。
蜷川幸雄はシアターコクーンで。
野田秀樹は世田谷パブリックシアターで。劇場こけら落としです。
当時、野田は大竹しのぶと同棲状態でありましたが、
なんと主役に大竹を抜擢したのは蜷川で、
野田版の主役は、天海祐希でした。
お話は、現代の発掘現場と、発掘されている過去の時代とを行き来しながら、
「王の覚悟」について、恐ろしいほどに厳しく踏み込んだものです。
いずれ劣らぬ名舞台でしたが、野田の脚本の意図を丸裸にしたのは、
蜷川の方だったと思います。
野田版は、舞台装置の転換が奇抜で遊び心満載、
一つの装置にさまざまな意味をもたせて場面転換を図るところが秀逸でした。
天海のヒメ女が、女の子が女王になっていく過程だとしたら、
大竹のヒメ女は、女王が女になっていく、そんな舞台でした。
富田靖子の熱演も光ります。私はこの舞台から、彼女を見直しました。
私がもっとも愛する場面は、ラスト。
「化けて出てこい!」というセリフには、ミズヲの、
ヒメ女への愛がつまっていて、戯曲を読むだけでも背筋が震えます。
野田版は堤真一、蜷川版は勝村政信。どっちもよかった!
*2006年7月15日のMixi日記をもとに書き直しました。
*「パンドラの鐘」は20世紀最後の戯曲集
に収録されています。

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