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「広島に原爆を落とす日」@北とぴあ

つかこうへいが鬼籍に入るまでの最後の18年間を過ごした北区つかこうへい劇団。
つかの死によって解散はしたが、そのメンバーによって「北区AKT STAGE」を設立、
今回が旗揚げ公演となる。
7/14(土)の初日を前に、「広島に原爆を落とす日」公開ゲネを観た。
つか自身が演出したのは、1979年の西武劇場での初演のみ、
ほかにSMAPの吾郎ちゃんが主演をしたものとか、2回ほど外部公演があるが、
今回は、つかの懐刀ともいえる古参の武田義晴が演出ということもあり、
ぜひ観たいと思った。
北区つかこうへい劇団の舞台は、つか急死の中で行われた「飛龍伝」を観ている。
これもとてもよかったので。
結論。
行くべし。
私は、つかこうへいの舞台をリアルタイムで追っかけていなかったので、
本当の意味でのつかの凄さは正直人に語れない。
しかし、
同じ時代を生きてきた人間として、彼の生きざまは知っているし、
彼がいいたいことは、芝居を見ればわかる。
「広島に原爆を落とす日」は、本当に名作だ。
それも、3.11以降に見れば、そこに描かれている人間の普遍性が
いかに深く、いかに美しく、いかに醜いものかが手に取るようにわかる。
「国民の生活のために」原発を再稼動させる、という男は、
「敗戦の後の日本の経済復興約束と引き換えに」
原爆を1つ落としてもよい、と約束する政治家に似ている。
その「1つ」を「京都に落とさないため」に選ばれた男が、
その知性から原爆の破壊力の恐ろしさをいやというほど知りながら、
それでも愛する人からの愛情と引き換えに、あるいは彼女の
「卑怯ですわ」のひと言に動かされてパイロット役を引き受け、
その罪の大きさも、すべてを引き受けて
自らもまた、命を引き換えにする覚悟で
熱く、冷徹に、そして悲壮に、
自分の故郷であり両親の住む広島に原爆を落とし、
「その先の日本」を憂え、そして望みをかけ、意気込みを語る主人公には、
どこか東電の吉田所長をほうふつとさせるところがある。
ラスト近く、その主人公が「戦後の日本」について
「これが、これが日本か?」と呟くところ、
この芝居にとってどういう台詞かなど、とっくに超越してしまっている。
私たちは、
あの戦争で「この戦争が終わったら訪れるであろう平和な日本」にすべてを託して
子のため親のため恋人のために戦地で死んでいった人たちの、
あるいはただただ劫火と雨のように降る銃弾から逃げ惑い、そして犠牲になった
いたいけな犠牲者たちの、
単なる「実験」のために、原爆を落とされ、地獄を見た人々の、
「これが日本か?」
に、今、2012年7月の今、どう答えられるのだろう。
世界で唯一の原爆投下された国でありながら、
世界でも有数の原発立国となり、
その危機管理はずさんきわまりなく、
あいてしまった地獄の釜の蓋からは、いまだとてつもない放射能が出続け、
その現場には人が行けないどころか、向かわせたロボットすら故障するほどの環境で
廃炉と決めた福島第一原発でさえ、このままでは廃炉にできないというのに、
いまだ免震棟もつくられていない大飯原発、
活断層の上にあるとされる大飯原発を、再稼動してしまう。
「これはもう、だめかもね」といいつつ最善を尽くした吉田所長は、
この再稼動を、どんな思いで見ているのだろうか。
日々とんでもない放射能を浴びながら、廃炉に向けて工事に携わっている人々は
一体何を思っているのだろうか。
「広島に原爆を落とす日」は東京・王子の北とぴあで7/14~16、
山形のシベールアリーナで7/21、22
今、観るべし。
そういう芝居である。
つかの、
インテリの考えることの薄っぺらさを揶揄する場面、
でもそのインテリたちにも良心もあれば弱さもあることがわかる場面、
まっすぐな人たちの、美しさと愚かさ、
貶められ、見下され、それでも笑って生きねばならない人たちが抱える
負のエネルギーが昇華していくその光こそ、
つかの芝居のカタルシスである。
差別用語満載で人の汚い本音が浮き彫りにされながらも、
人は愛によってのみ生きる覚悟を決められるのだと心に突き刺さる。
そういうつかの本質を、届けられるだけの質のよい舞台である。
北区AKT STAGEのこれからを期待する。

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