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「暁の誓い」

幕末、箱館(函館)の五稜郭で新撰組の土方歳三が壮烈な死を遂げてから7年、
榎本武揚、大鳥圭介、斎藤一ら、土方ゆかりの男たちが箱館に集められた。
呼び出したのは、山県有朋。その命で、陸奥宗光もいる。
「誠の字を書いた羽織を着た亡霊が、夜な夜な出るそうだ。
 廃刀令が施行される前に、土方を捕らえよ」
それが、山県の指令である。
しかし、実は山県はこの場で土方を殺すつもりなのではないか?
土方ゆかりの男たちは、かつての敵・長州出身の山県に不信を抱く。
つい数年前まで敵味方だった者たちが、
新しい日本を作るために力を合わせようとしていた時代、
その後大臣など、重責を担う5人の男たちがたどった
複雑な人間模様を回想しながら、
やがて「亡霊」との対決のときが迫る。
果たして、
「亡霊」は土方なのか、それとも……。
「廃刀令実施まで2日」というエポックに、
「明治以前」の時代との決別を託し、
「武士道とは死ぬことと見つけたり」の世界から脱却して
もう一度生き直そうとする男たちの物語
それが「暁の誓い」である(東池袋・あうるすぽっと。本日千秋楽)。
歴史上の人物を揃えながら、説明的な部分はできるだけ排して
見やすい舞台になっているところがよい。
萩野崇、弓削智久、出合正幸など、
「仮面ライダー」や「ボウケンジャー」出身の俳優たちが出演。
特に大鳥圭介役の萩野崇はセリフ回しの濃淡が素晴らしく、頭一つ抜きん出ている。
殺陣では斎藤一役の出合正幸が光った。
若手お笑いコンビ・平成ノブシコブシの吉村崇は陸奥宗光役で、
演出家から何度ダメダシをくらっても結局笑いを捨てられず、
最初はトーンのすれ違いが気になるものの、
終盤になると、それも登場人物のキャラクターと化し、それなりにいい感じ。
相方の徳井健太は笑いを封印しての土方役だが、
声はよく通ったものの、彼のカリスマ性を出すまでには至らなかった。
問題は、タイトルである。
「暁の誓い」というからには、この大物5人によって
最後の最後に大きな誓いが交わされるものと思ってみていたのだが、
「これ…ですかね?」と思う「誓い」のようなものが、
斎藤と大鳥の間で交わされるだけ。
それは、
「もう幕府の時代は終わった。明治の時代を生きていくんだ」という誓い、
という意味では、たしかに「誓い」なのだろう。
しかし、
武士が廃刀令を受け入れる、という非常に複雑な心境を、
斎藤一にしか背負わせなかったところに甘さが残る。
たとえ新生日本を肯定していたとしても、
武士出身のものが刀を捨てることにはもっとこだわりを持たせた上であれば、
この「誓い」が全員で共有され、もっと重みを持ったことだろう。
劇の手法としては、回想シーンが多用され過ぎ、
時間軸がときに不鮮明になったきらいがある。
再現シーンは今の半分くらいにして、
あとはセリフの中で語らせてもよかったと思う。
作・演出は放送作家出身のカニリカ。「女性の歴史オタク」(レキジョ)を自認し、
憧れの土方歳三をキーに、この物語を作り上げた。

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