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「点と線」

昨年11月末に前後編を二日かけてでやっていた、
ビートたけし主演の「点と線」。
テレビ朝日開局50周年記念ドラマということで、
配役も豪華だったが、
竹山洋の脚本が見事で、非常に見ごたえがあった。
特に前編は、
次々と出てくる疑念とヒント、
全貌が明らかになりそうで袋小路に入ってしまう期待と失望、
警察側と容疑者側の、含みのある緊迫したやりとり、
息をもつかせぬ展開で一気に見せた。
それに比べると、二日目に後編は、多少中身の濃さに違いがあった。
一心腐乱に峠まで登ったから、下りはゆっくり、みたいな感じ。
トリック、トリックで押しまくっていた前半、
夫婦愛、師弟愛に流れた後半、という印象が残った。
その原因が脚本にあるのか原作にあるのかを確かめたくて、
私は久しぶりに原作を読み直した。

点と線改版
すると、
この「前半の方が後半より面白い」という性質は、
脚本のせいでなく、原作の構造に既に内含されていたことがわかる。
原作の後半は、すべて「手紙」だった。
つまり動きが少ない。
東京の刑事・三原(ドラマでは高橋克典)の視点でまとめられた
博多の刑事・鳥飼(ドラマではビートたけし)に宛てた事件の顛末の報告。
であるからして、
最終的に罪について何も語らず死んでしまう安田夫妻(ドラマでは柳葉敏郎と夏川結衣)の胸の内も、
「・・・だったのでしょう」といった三原のあて推量にすぎない。
それで、読者に対するアピール度がイマイチなのだ。
この原作にあたって考えると、
竹山洋の脚本は登場人物一人ひとりに、実に深い奥行きを与えている。
安田が死を選んだ訳も複層的に描かれ、
たしかに原作と同じく「遺書もなく、何も語らず」死んではいるが、
安田としてのケジメのつけ方に一本スジの通ったものを感じさせるし、
妻・亮子が病をおして犯行に加担する熱情にも単なる「冷血な女」以上の造形があった。
後半の作りだけではない。
原作では「××省」の官僚として、情報くらいしか載っていない人物に
役職と物語に見合ったキャラクターを作り、
殺されたお時の母親(市原悦子)も、大きく膨らませている。
原作の鳥飼は、九州から一歩も出ていないのに、
ドラマでは東京に、秋田に、鎌倉に、伊豆に、と八面六臂の活躍。
テレビを見ながら感じていた
(この時代に、一地方の刑事がここまで自由に日本中を捜査できるかなー)という違和感は、
やはり当たっていた。
脚本でも、そのあたりはかなり丁寧に「理由付け」はしてあるけれど、
やはり「東京の警視庁の刑事さん」である三原の出張ほどには説得力がなかった。
実は「空白の4分間」も、原作では鳥飼の呟きをきっかけに三原が気づいたことになっている。
ドラマは鳥飼一人に集中させ、鳥飼の存在感が大きい。
原作では生きていた鳥飼の妻も「病死」の設定に変更、
安田の妻との対決が、よりシャープなものになっている。
鳥飼も安田も、「あの戦争」をひきずっていることを全面に出して、
今はもう新幹線のホームになってしまった「15番線」と同じく、
昭和の記憶を引きずり出すドラマに仕立てたのだ。
もちろん、原作の骨太な構成があってこその成功であるのは言うまでもない。
それにつけても、
「点」と「線」とは、よく言ったものだ。
時刻表トリックのはしりともいえる、この作品が、
まさに「駅という点」と、「線路という線」で作られた小説であることを実感。
始点が偽装心中であり、終点は本当の心中というところも、考え抜かれた道筋だとわかる。
個人的には、偽装ゆえに「情交の跡がなかった」始点に対し、
「病弱な妻と覚悟の情を交わした」終点であったのではないかと想像。
原作では「九州の鳥飼」と「東京の三原」でしかなかった2つの「点」。
松本清張はそれをスッと「線」で結んでこの小説を作り上げた。
竹山洋は「面」で塗りつぶした、とでもいおうか。
大作家・松本清張を向こうにまわして、「別もの」を成功させた竹山に感服した。
一つだけ、
時が経っての再読だからこそ、発見した場面があった。
これから心中しようと列車に乗り込んだ二人だというのに、
男だけが食堂車で食事をしていることへの疑念を持った鳥飼は、
自分の娘(ドラマでは内山理名)に尋ねる。
「恋人が食事をすると言ったら、満腹でもついていくか?」。
鳥飼の娘は「一緒にいたいから」ついていく、という。
しかし鳥飼の妻は、夕食を食べる鳥飼が「茶の一杯でもつきあえ」と言っても
「いやですよ」と一蹴。
・・・そういえば、私も、夫の遅い夕食のそばで、ずっと話につきあうことを最近はしないな、
と、思わずくすんと笑ってしまった。
ドラマでは妻は死んだことになっているので、娘とのやりとりしかなかったのが残念である。

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