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「日出処の天子」


【中古本】日出処の天子(全8巻)<8冊全巻セット>
名著「日出処の天子(ひいづるところのてんし)」は、
「聖徳太子は超能力を持っていた」という設定のもと、
両性具有的な妖しい魅力をもった若き日の聖徳太子(厩戸皇子)の物語。
彼と同時代を生き、強いつながりを持っていた蘇我蝦夷(毛人)は、
どろどろした政治権力の世界にあっても誠実な男、かつ
彼のただ一人の理解者として描かれている。
エンタテイメントを忘れないながらも重厚にして緻密、
非常に冷徹に綴られた歴史もののコミックスである。
厩戸と毛人との関係は、
竹宮恵子の「風と木の詩」のセルジュとジルベールにも似ている。
「陰陽師」の安部晴明と源博雅でもある。
孤高の天才と無類のマジメ人間という組み合わせは、
私たちに「自分にはないもの」をすんなり理解させてくれる
究極のツールなのかもしれない。
それにしても、
歴代の天皇が豪族たちとくんずほぐれつ、
血みどろの権力闘争を繰り返すさまといい、
朝鮮半島の勢力地図の動きや、その中での仏僧の果たした役割といい、
いくらでも難しく書けるだろう古代の歴史を、
山岸涼子という人は誰にでもすんなり理解できるような形でマンガにしているのだ。
その構成力たるや、見事というほかはない。
その一方で、「マンガ」が持つ娯楽性を忘れない。
ちょっと見、「男と男の恋物語」っぽい側面もあり、
彼が女に対して見せる嫌悪のようなものを理解できずに右往左往する
周囲の女たちの無理解にもリアリティがある。
しかし、
出色は「母」間人媛皇女(はしひとひめ)との関係。
厩戸皇子の超能力は、母譲りであったのに、
母が自分を理解するどころか、怖がったり遠ざけたりすることに対し、
幼い子どものように絶望する皇子。
ここが皇子の孤独を一層深くし、彼の冷徹さをいよいよ研ぎ澄ましたという伏線は、
皇子が泣いたり叫んだりしないだけに
はらわたがちぎれるような悲しみがかえって身にしみる。
「歴史上の人物」が様々に取り上げられている例の一つとして、
この「日出処の天子」が社会の教科書で紹介されているという話を聞いて、
世の中も本当に変わったと、つくづく感慨が深い。
今やMANGAは日本の一大輸出産業。
不倫も同性愛も小児愛もあり、というイケナイサブカル歴史絵巻も、
とうとうお墨付きをもらったということか。
いや、どういう衣装を身に着けていても、
人はその人の本質に感動し、敬意を表すということなのだろう。
歴史好きの人には、絶対おすすめ。
歴史をよく知らない人には、歴史の面白さを知る最適本として、さらにおすすめ。
ちなみに、実写版で映像化するなら、厩戸皇子は、絶対Gacktでしょう。

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