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「古事記」にみる、親心

旧約聖書を読もうと思ってまずつまずくのは、
「○○の息子△△、その息子××・・・」と続く
家系図の読み下しみたいな記述に出くわすこと。
物語を読もうと思ってるのに、
何なんだ、このしち面倒くさい記録は!
カットカット!
・・・と、思わず読み飛ばしてしまうページです。
古事記にも、こうした家系図暗唱、みたいなページがあります。
一人の天皇の話が始まると、
まず最初に「誰と結婚してその女性の子どもは誰と誰」
そして「その子どもは○○の妻、××の祖先」などなど。
とりあえず今回は読み飛ばしはなし。
きっとエクセルかなんかで
人物整理をしながら読むといいんでしょうね。
名前も似てるから困る。
さて、きのうの垂仁天皇の段。
あんなドラマチックな話が始まる前に、
やっぱりありましたよ、「后妃皇子女」の項。
最初に読んだときは、
「なーに? この天皇、姉妹をセットで嫁にするのがスキなの?」と思った。
二組の姉妹(二人と三人)と結婚してるから。
ヘンな男!と思ったけど、
まあ、この時代は同腹(母が同じ)でなければ、兄妹でだって結婚していたから、
そんなに目くじら立てるほどのことじゃなかったんでしょうが。
いずれにせよ、
あの熱愛悲恋を知ってしまうと、
「どうしてそうなったか」を知りたくなる。
まず、兄の謀反で自害した最愛の妃・サホヒメは、
「后」っていうくらいで、第一夫人・正妻だったんです。
この后は、天皇に
「お前の結んだ下帯を、誰にほどかせりゃいいんだ?」と泣きつかれて
「丹波のヒコタタスミチノウシの王の娘、
エヒメ(兄比売)とオトヒメ(弟比売)にしなさい」と勧めます。
「姉妹セット」は、なーんと后のアドバイス。
だけど、言われた二人のほかにあと二人、
ウタゴリヒメとマトノヒメという、妹二人も一緒に召し上げる。
召し上げといて、
結局あとの二人は返してしまうの。
なぜか。
答えは「いとみにくきによりて」。
だから欲張らずに、后の言うことだけ聞いてりゃよかったのにー。
返されたヒメはすごいです。
マトノヒメは、
「同じ姉妹なのに、ブスだから返されたなんて、近所に知れたらイヤ~!」
そういって丹波に帰る途中、山代の国(京都)に差し掛かったとき、
木の枝に首をくくって死んでしまった。憤死ですね。
懸木(さがりき)転じて相楽(さがらか)というのが、その地の名になったとか。
深い谷に落ちて死んだという話もある。
その地名は「堕国」(おちくに)から「弟国」(おとくに)に。
今の京都の乙訓(おとくに)だという。
一番大好きなサホヒメはもういないんだから、
きっと垂仁さんも、ちょっと人生投げてたかもしれないね。
最愛の人に寝首をかかれるところだった、と思うと、
夜伽の床も、ちっとも安らぎの場ではなくなってしまったでしょう。
彼は女には投げやりだったかもしれないけど、
サホヒメから手渡されたホムチワケのことは、とても愛したの。
でも、
ホムチワケは、一言もものを言わぬ子どもだった。
ある日空飛ぶ鳥を見て口をパクパクさせたので、
「すわ、あの鳥をつかまえよ、あの鳥を見たら話すかもしれない」と
家来たちに必死に追わせた。
紀伊→播磨→因幡→丹波→但馬→近江→美濃→尾張→信濃→越
今でいうと、
和歌山→南兵庫→鳥取→京都→北兵庫→滋賀→岐阜→愛知→長野→新潟
気が遠くなるほど追っかけて、とうとうつかまえた。
でも。
ホムチワケはやはり、何も話さなかった。
もう、タタリかもしれない、とか、ありとあらゆること考えて
家を建て直したりお祓いしたり。
バカな親って思うかもしれないけど、
子どもが病気になると、親なんてみんなこんなもの。
「あそこにいい医者がいる」と聞けば、
丹波でも播磨でも、信濃でもどこでも行っちゃいますよ。
それで、家には宗教の人がやってきて、
「祖先を大事にしないからです」とか「祈りなさい」とか言うんですよ。
生まれたと同時に母を失ったこの子が不憫で、
本当に一生懸命、心から治してやりたいと思ったんでしょうね。
最終的には話ができるようになったので、
天皇はとっても喜んだ、というお話です。

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