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「暗殺リトビネンコ事件」

2006年11月1日、一人のロシア人が
イギリス・ロンドンの日本料理店で倒れた。
名前はアレクサンドル・リトビネンコ。
ロシアFSB(連邦保安局)の元中佐でありながら、
そのFSBがやってきた数々の「悪事」を内部告発、
数回の別件逮捕と釈放を繰り返した後にイギリスに亡命した男である。
一気に彼の身体にダメージを与えたのはなんと、
放射能性の化学物質だった。
放射能の痕跡は、
日本料理店だけでなく、その前に立ち寄ったホテルのロビーに、
そのロビーで口にしたコーヒーカップに、
そして、
リトビネンコとともにロビーにいた男の乗ったロシア行きの飛行機の中に・・・。
まるで「007」か「Mi6」か、というスパイ映画並み、
いやそれ以上の国際的な暗殺事件が
21世紀に起こったのである。
本当に、そんなことがあるんだろうか?
放射能を飲ませて殺すなんて、できるんだろうか?
「FSB」って、味方じゃないんだろうか?
誇りを胸にFSBに入り、国家のために忠誠を尽くしていたリトビネンコが
何に気づき、何に怒り、
いかにして「おたずねもの」になったのか。
いまだに解決にはほど遠い、生々しいまでに新しいこの事件が
彼の死後1年経つか経たないかで映画になったのには
数年前からリトビネンコのインタビューを続けていたネクラーソフ監督が、
リトビネンコが毒を盛られる数ヶ月前にインタビューを完了していたといういきさつがある。
本来ならば、彼の死によってすべてが無に帰すところを、
まるで彼の「遺書」のように、
映画はロシアの闇を鋭くえぐっていく。
ネクラーソフもまた、ずっと祖国のありようを懐疑的に眺めてきた一人なのだ。
ロンドンの家の窓という窓を閉め、すべての明かりを消し、
家の奥の奥で証言を続ける生前のリトビネンコと
それを撮り続けるネクラーソフ。
祖国を思う二人の男の、強い決意と覚悟がずっしりと重い。
強靭な知恵と身体と精神力によって、
リトビネンコは11月23日まで生き延びる。
その結果、「放射性化学物質」が尿の成分となって体内から排出された。
「ポロニウム210」。
致死量を購入しようとすれば、10億円はするという代物である。
単なる「怨恨」や「通りすがり」の殺人に使う道具ではない。
国家に反対意見を唱えることが、そのまま命の危険を意味する社会。
農奴のいた帝政ロシアでもなく、
共産党一党独裁のソヴィエト連邦時代の話でもない。
今、私たちと同じ空気を吸っている人々の話。
知らないことがたくさんある。
ぜひ、彼らの叫びを直接聞いてほしい。
「暗殺リトビネンコ事件」は現在は東京・渋谷のユーロスペースで上映中。
以降、各地で上映予定です。
『Wife』の最新号・映画欄『仲野マリの気ままにシネマナビ』では、
 この映画とDVD『イワン雷帝』について私が紹介しています。
*この事件について、ジョニー・デップが映画化する企画があるとの情報があります。

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