映画・演劇・本・テレビ、なんでも感動、なんでもレビュー!

  1. 映画
  2. 11 view

「ユメ十夜」

夏目漱石の名作「夢十夜」を、10人の監督が1夜ずつ作っていくという話題の映画です。
「平等に」ということで、ベテランも若手も、製作費は同じ。
あとは「自由に撮ってください」。だから、まったく色の違った10作品が揃いました。
さあ、一体あなたはどれが見たい?
以下が、監督名と主演俳優です。
第一夜:実相寺昭雄(小泉今日子、松尾スズキ)
第二夜:市川崑(うじきつよし、中村梅之助)
第三夜:清水崇(堀部圭亮、香椎由宇)
第四夜:清水厚(山本耕史、菅野莉央)
第五夜:豊島圭介(市川実日子、大倉孝二)
第六夜:松尾スズキ(阿部サダヲ、TOZAWA、石原良純)
第七夜:天野喜孝・河原真明(声・Sascha、秀島史香)
第八夜:山下敦弘(藤岡弘、山本浩司)
第九夜:西川美和(緒川たまき、ピエール瀧)
第十夜:山口雄大(松山ケンイチ、本上まなみ、石坂浩二)
私の感想。
とにかく、松尾スズキの第六夜が、群を抜いて面白かった。
大体「運慶」の第六夜は、原作でも十話中屈指の話。
その筋にのっとり、ものすごいテンポで松尾ワールド全開!
満員の試写室、思わず大爆笑。
主人公の阿部サダヲ、運慶役のTOZAWAのエネルギー圧巻。
オチも含めて、スキのない作りでした。
笑いの中にも話は深い。
もしかしたら、漱石を越えたのでは?
帰りに原作を読みながら、そこまで思わせた秀作でした。
市川監督は、さすが。
「第二夜」とタイトルが出てきたその瞬間、
「これは市川作品だ」とわかるからすごい。
作りもサイレント風で、形式美にこだわり、すばらしかった。
モノクロの中に「朱」が映えます。
製作サイドの話では、今までに夏目作品を映画化している大御所・市川監督に
ダメモトでオファーしたところ、すぐにOKが出たとのこと。
90歳の御大は、楽しんでこの小品を作ったようです。
もっとも「漱石」らしさが滲む作品ではないでしょうか。
「ゆれる」が評判の西川監督も、第九夜で持ち味を発揮しています。
原作にある「語り手=漱石」の視点を残しつつ、
設定は換骨奪胎。そこに女性の心理を描写して、親と子の内面に迫ります。
「夢」というハコをうまく使ってあっぱれ、です。
清水崇監督の第三夜は、筋に忠実ながら、漱石自身を描いて見ごたえがありました。
主演の堀部圭亮・香椎由宇のすっとぼけた会話が、
ホラーとしての底流とのコントラストを際立たせ、奥行きを作っています。
私好みは、以上の4話でした。
とはいえ、他の話にもついついひきこまれ・・・。
故・実相寺監督の第一夜は、オープニングにふさわしい不可思議世界。
脚本も故人の久世光彦です。
ものすごーく気持悪いんだけど、
実は原作をそのままなぞって作っているというのが、第十夜。
脚色は漫☆画太郎。
ここまで自分ワールドのオリジナリティを大切にしつつ、
漱石のユメをきちんと伝えているのは、見事というしかありません。
ただ、市川崑の10分を見るために、
この10分も見させられる常識的マダムたちは、
ちょっと気の毒かもしれない。目をそむけたくなるシーンあり。
でもよくできてる。印象、強いです。
飛ぶ鳥を落とす勢いの松山ケンイチもいいが、安田大サーカスのメンバーも好演。
「世にも奇妙な・・・」的なセピア色ドラマが第四夜、
ちょっとホラーなサイコ映画が第五夜、
藤岡弘の存在感満点な第八夜、
そして唯一のCGアニメ、第七夜。
110分とは思えない、中味の濃さ!
そしてバラエティに富んだ表現方法。
普段見たことのない監督作品への
未知への扉を開ける鍵となるかもしれませんね。
1月27日より、シネマスクエアとうきゅうシネリーブル池袋などで、いよいよ全国公開です。
*2006年12月8日のMixi日記をもとに書き直しました。

映画の最近記事

  1. 「三島由紀夫VS東大全共闘 50年目の真実」

  2. 紀里谷監督のインタビュー記事をアップしました

  3. 「FOUJITA」~藤田嗣治の戦争画を考える

  4. ガメラ、ゴジラのいる映画館前のレッドカーペットを歩く

  5. 「ザ・ウォーク」

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。


Warning: Undefined variable $user_ID in /home/nakanomari/gamzatti.com/public_html/wp-content/themes/zero_tcd055/comments.php on line 145

PAGE TOP