太陽と月に背いて
フランスの詩人ランボーとヴェルレーヌの愛と嫉妬と芸術の叫びを
画面いっぱいにぶつけるようにして描いた秀作。
ランボーにレオナルド・デカプリオ、ヴェルレーヌにはロマーヌ・ボーランジェ、
監督は「敬愛なるベート-ヴェン」のアニエスカ・ホランドです(1995)。
そうですね、ひと言でいったら竹宮恵子の「風と木の詩」みたいな繊細さと暴力性、でしょうか。
デカプリオを見たくて映画館に行った人は、みんなヴェルレーヌのおっちゃんに目がテンだったと思います(実は若いんだけど、おっちゃんぽい)。
もちろん、レオもすごくいいんですよ。レオの狂気がなければ、この映画は成立しません。
また、その美しいこと。
ヴェルレーヌが肉感的な妻よりランボーに傾いた気持がよくわかる、というほどの説得力です。
既にフランス文壇で名を上げた紳士にして家庭もちのオトコが、
ランボーの底知れぬ魅力にどんどん引き込まれていってしまう。
それは、芸術の罠だったかもしれない。
はじめ、ちょっと生意気な若造にエールを送る、くらいの気持ちで自分の才能を分け与えていたつもりが、
いつのまにか彼の天才に自分がのみこまれる危機を感じ始める。
それは恐怖であり、畏怖であり、同時に至福の愛だったりもする。
社会と自分とに引き裂かれそうになるヴェルレーヌ。
ただ心のまま、野生児のように振舞うランボー。
観る人全員の胸をぐちゃぐちゃに引っ掻き回していきます。
いつのまにか、ヴェルレーヌに感情移入していく私。
誰もが自分の中に魔物を棲まわせている、
そのことに気づかされずにはいられない映画なのです。
ただ、終わり方がねー。
若いレオさまにヒゲつけて、「その後」を描くというのは、
ちょっと不自然でした。 (ラスト、ものすごーく駆け足だったし)
*2006年10月19日のMixi日記をもとに書いています。
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