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「痛いほどきみが好きなのに」

「女性が失恋した後の喪失感を描いた作品はたくさんあるのに、
 男性のそうした物語はあまりないことに気がついた」
そうして、俳優でもあるイーサン・ホークが自分の体験をもとに作ったのが、
「痛いほどきみが好きなのに」
新進の俳優・ウィリアムが、クラブで歌手を目指して歌う女性・サラと会って
二人は恋に落ちる。
たしかにオレが声をかけた。でも
最初にのめりこんだのはサラの方だ。
すべてを自分に振り向けることを求める。
元カノなんかと一緒に話するなんて、一体どーいう料簡??
ワタシのママに会って!
教会に一緒に行って!
ずっとそばにいて!
情熱的な毎日、二人だけの時間。
楽しかった日々を体いっぱいに吸い込んで、
ウィリアムは仕事へと旅に出る。
「会わない日」は1日でも少ないほうがいい。
「びっくりさせてやろう」とちょっと早めに帰ってくる。
プレゼントなんかもってね。
文字通り、サラは驚いた。
でも、
うれしそうじゃなかった。
なぜ?
オレが帰ってきたのに、なぜ?
そこから始まる男の苦難。
それは、
ひと昔、いや、ふた昔前なら、女の物語だ。
「恋愛なんかにかかづらわっていたら、自分の人生が生きられない」
まっすぐ前を見て自己実現に邁進する女を追って、
男はありとあらゆる手段で振り向いてもらおうとするけれど、
やればやるほど女はさめていく。
こっけい、というより、
ほとんど、痛々しい。まさに、「痛いほど」人を好きになってしまった男の物語だ。
「女々しい」という言葉は、男に使うもんなんだなー、と
つくづく思う。
「男のコケン」という言葉が生きていた社会の中では、封印されてきたものが、
ここへ来て正直すぎるほど前面に押し出されてきた感じ。
ただ、彼が
「求めた愛が去っていく」ことをここまで恐れるのには、ワケがあった。
今まで逃げてきたそのワケに、いよいよ立ち向かうのだが、
これまた「痛いほど」苦い結末。
その「痛さ」を受け入れたことが、成長だというのだろうか…。
無理やり「よかった」と思い込もうとするウィリアムが、さらに哀れ。
人間って、いつまでも子どもの部分をひきずって生きるしかないんだよね。
何だかなー。
誰も死なないし、悪い人は出てこないし、
それなのに、こんなにつらいのは何でだろう??
人の気持ちって、どうにもならない。
そのことが、
心を押しつぶすんだと思う。
5月17日から公開中です。
つらい失恋をして、どうしていいかわからない人、
大好きな人との距離をどう保っていいかわからない人、
この映画を観てウィリアムと一緒に右往左往しましょう。爆発しましょう。
心えぐられて、
そして1歩、踏み出しましょう。
映画が何のかんのというより、
「あの人にいつか心のシアワセが訪れますように」って、
実在の人物に対して思うように願ってしまった私でした。

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