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「赤い靴」


 赤い靴 [CLASSIC MOVIES COLLECTION] / 洋画
古い映画です。
何度かテレビで見たことがあり、
アンデルセンの童話「赤い靴」をモチーフにした新作バレエを話の軸にして、
あるバレエ団で若い女性ダンサーが実力を見出され、看板プリマになるまでを描く。
・・・話だと記憶していました。
久々にじっくり見てみると、そんな単純なストーリーではありませんでした。
オトナになったからこそ受ける、また違った感慨もあって
単なる「悲劇」というだけでなく、単なる「バレエのお話」でもなく、
人生を考えさせられるところ、満載。
「家庭か仕事か」を迫られた才能ある女性の葛藤を描いた話であり、
自分が見出した才能を若い男に奪われて嫉妬する「オペラ座の怪人」のような話であり、
芸術家が成功するためには、どこで踏ん張らなくてはならないかを描いた作品でもありました。
・・・・・・・・・・・・・・・
ただただ成功すること、認められることだけを願って
一心に仕事に取り組んでいる作曲家とダンサーがいた。
あるバレエ団のオーナーが、時を同じくして二人の才能に目を留めた。
オーナーは、若き作曲家に新作バレエの音楽を委嘱し、
そのバレエで初めての主役を踊るよう、バレリーナに告げた。
オーナーの企画、彼の作曲、彼女の踊り。
新作「赤い靴」は、大成功。
バレエ団は新進プリマの人気で世界中を興行、
二人のキャリアもぐんぐん上がる。万事がうまく行っていた。
その、作曲家とバレリーナが、恋に落ちた。
モチベーションは上がるし心は弾むし、
・・・でも、ギリギリの隙間を埋めるようにして精進してきたときに比べると、
どこかに甘さが。
そこを自分で気づき、修正できるほど、若人というものは器用じゃない。
盛り上がる二人にとって、
苦言を言い渡すオーナーは「敵」にしかみえない。
ましてやその男が、バレリーナに恋心を抱いているのがミエミエだったとしたら、なおさら。
「くだらない。嫉妬してるだけじゃないか!」
正しいのはこっち。聞く耳持たず。
そして、悲劇への道をカップルは歩むことになる。
人から支えられて自分の道を突っ走ってきた人が、他の人を支える側にまわるとき、
きっと思いもしなかった心の変化が生れることだろう。
「彼と一緒に行く」
彼を支え、そして自分も踊っていく、と決意したバレリーナは、
しかし、
気がつくと自分の内なる「踊りたい」欲求をもてあまし始める。
男が成功の道を歩み出せば、自分は取り残されていく。
でも、自分の選んだ道だ。これでいいんだ。
互いの才能を認め合って愛が生れたカップルなのに、
どうして恋愛は、結婚は、人の行く手を阻む壁となるのだろう。
「愛している」「一緒にいたい」と「踊りたい」は、なぜ両立しないのだろう。
オーナーの気持ちも痛いほどよくわかる。
「才能を潰してはいけない」
「彼女の才能を育てられるのは、自分だけ」
その気持ちにウソはなく、誤りでもない。
しかし、
そこに横たわる所有欲は、若い男と何ら変わらないのだ。
童話「赤い靴」は、「踊りたい」という自分の欲望が悲劇を生む物語。
「好き放題に遊んでいると、危ない目に遭うよ、戻れなくなるよ」というお話だ。
でも
この映画を見て私は
自分の「赤い靴」をどう守っていけばいいのか、
そのことを強く考えさせられた。
人を愛する、そして愛されるって、コワイです。
*バレリーナに恋をあきらめさせようとするオーナーは、
『エースをねらえ!』で藤堂にメロメロな岡ひろみに愕然とする宗方コーチと同じ眼をしてました。

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