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頂点という名の終焉~1982年のオフコース

NHKの教育テレビで、
「昔の若者番組」を再放送している。
昨夜は若い広場「オフコースの世界」(1982年放送)
もちろん、私は当時リアルタイムで見ていた。
見ていたが、
今見直してみて気がつくことがいろいろあった。
小田と鈴木の距離。
いつも4人と1人。
小田の周りには他のメンバー、
鈴木は一人、もしくはスタッフと一緒。
レコーディングの合間に野球でくつろぐ和気藹々の中に、
鈴木はいない。
「曲作りが遅れているから」。
独立独歩、ともいえる。しかし、
すでにそれが5人の中で当たり前になっていて、
「一人」の鈴木が特異でも何でもなくなっていることが
かえってうすら寒い。
私は1970年からオフコースを見ているので、
この編成になる前だって
いろいろなメンバーが出入りしていたのを知っているけれど、
それは彼らにとって「オフコース」ではなく、
バンドの仲間だったりサポートメンバーだったりしただけだった。
本当に「オフコース」といえるのは
小田にとっての鈴木、鈴木にとっての小田
この二人だけだ。
常にフィフティフィフティだったはずの二人が、
アルバムの印税もそうなるように、
必ず楽曲の数を同じにしていたオフコースが、
ある時点から小田主導のグループになっていった。
そういう戦略を、プロモーションサイドが仕掛けた結果、という話も聞く。
テレビの中とはいえ、
久しぶりに、
鈴木と小田が隣り同士でコーラスをレコーディングする場面を見る。
あのハーモニーは、もう戻ってこない。
どこまでいっても
「小田がメインで鈴木はサブ」みたいな扱いの番組構成に
改めて鈴木の気持ちが分かるような気がした。
自分を、そして他人を語るのが上手な小田に対し、
鈴木は口べただ。
その分、損してしまったかな。
解散したとき、
鈴木の歌の歌詞は、自分への叱咤だったんだ、と感じた。
たとえば「メインストリートをつっ走れ」。
二番に甘んじるな、という鈴木の思いが、溢れまっている。
この番組放映直後、鈴木は武道館コンサートを最後にオフコースを脱退、
オフコース自体、数年の休止期間に入り、やがて解散する。
だから、
「over」という名前のこのアルバムのレコーディング時を取材したこの番組は、
ある意味オフコースにとって確信犯だ。
最後だから残したい。
そんな気持ちで取材をOKしたのかもしれない。
「頂点」を撮影するはずの番組なのに、
伝わってくるこの息苦しさ。
当時、
それはストイックなまでに自分の音楽を追求すればこその
求道的なつらさなのだと思っていた。
でも、違ったね。
おそらく既に鈴木から最初の一撃をくらっていただろう当時の小田の、
「オフコースは5人でやっていく時期は過ぎた」
「一人ひとりに戻って精進していくしかない」という言葉が
本当に意味深で、非常に重い。
「松尾が」「清水が」などと話をそらしてはいるが、
そういう意味じゃない。
今だから、そう確信をもって言えるのだけれど……。
そんないきさつを知ってか知らずか、
最後の曲は「言葉にできない」だ。
作詞は小田和正。その歌詞を引用する。
(著作権保護の観点から印刷はご遠慮ください)
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
終わる筈のない愛が途絶えた
いのち尽きてゆくように
ちがう きっとちがう
心が叫んでる
ひとりでは生きてゆけなくて
また 誰かを愛している
こころ 哀しくて
言葉にできない
la la la…… 言葉にできない
せつない嘘をついては
いいわけをのみこんで
果たせぬ あの頃の夢は
もう消えた
誰のせいでもない
自分がちいさすぎるから
それが くやしくて
言葉にできない
la la la…… 言葉にできない
あなたに会えて
ほんとうによかった
嬉しくて 嬉しくて
言葉にできない
la la la……言葉にできない
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「終わるはずのない愛が途絶えた」
「ちがう、きっとちがう」
「誰のせいでもない、自分が小さすぎるから」
「果たせぬあの頃の夢はもう消えた」
自分から離れていく鈴木をひきとめられない、
そのことへの悔しさとさみしさで
小田の心が引きちぎられていく。目に見えるようだ。
そしてこれより先、
小田の歌は、鈴木へのラブコールとなる……。
30年たった今も
小田は「鈴木が自分から離れた」ことからいまだに逃れられていない。
歌さえ続けていれば、
きっといつか、また二人で肩を並べて、
二人にしか作れないハーモニーを醸して……。
そんな日が来ますように。
小田さんのためにも、
鈴木さんのためにも、
そして
私たちのためにも。
思わず、祈ってしまった。
なんて哀しい番組だったろう。

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