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フィギュアスケート、オリンピック代表決まる

オリンピックイヤーを前にした全日本選手権。
男子は高橋大輔が優勝、
ケガで1シーズン棒に振った後に復活、
既に代表内定していた織田信成を制して2枚目の切符を手にした。
3枚目は小塚崇人。
男子は、順当な3人が指定席に座った形だ。
それに比べ、
女子は、まれに見る熾烈な闘いだった。
既にグランプリ・ファイナルで代表内定を決めていた安藤を除く、
あと2枚の切符を
復活を賭けた浅田真央、
四年前の屈辱をはらしたい中野友加里、
病気を克服して戻ってきた鈴木明子、
3人が争う。
ショートプログラムでは安藤を含め、4人が1.2ポイントの間にひしめく。
勝負はフリーの結果次第となった。
4人の中で一番滑走順が早かった中野は、
完璧ではなかったものの、手堅くまとめて196点台の高得点。
安藤は、
全体的に動きに切れがなく精彩を欠いた。
最初のコンビネーションは結局いつものようにトリプルトリプル回避、
技と技の間の滑りが棒立ち、
後半は疲れがさらに目だってジャンプにもミスが出た。
続いて浅田は、
トリプルアクセルを1回それも単発に集中して成功させ、
その後も絶対に取りこぼしをしないという気迫を感じさせる滑りで
204点台と200点越えで、この時点でほぼ優勝を手中に。
安藤の気の抜けた滑りと比べると、
四連覇とオリンピックの二つのプレッシャーの中、
ここまで緻密にプログラムを完璧に仕上げた浅田は尊敬に値する。
そして鈴木。
前日のショートも魅力的だったが、
今日のフリー「ウェストサイド・ストーリー」もよかった。
いつもは後半のアニータのステップがすべてだが、
今日は前半、マリアのパートも非常に心に迫るものがあり、
ジャンプを成功させた後に転倒というアクシデントも忘れさせてしまうほど、
天真爛漫に、自分の持てる限りの力を出し切った。
そして、
中野をわずか0.17ポイント抑えて2位に滑り込み、
オリンピックへの切符を獲得したのだった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
勝負というのは、本当に残酷だ。
どんなに素晴らしい人が、素晴らしいことをやってのけても、
その列車に乗れる人数は決まっている。
中野は前回のトリノに続いて、その列車に乗れなかった。
四年前、
トリプルアクセルを成功させ、勢いに乗り、飛ぶ鳥を落とす勢いだった中野は、
実物の安藤には勝てたが、「四回転の天才少女・安藤」の幻影に勝てず
好成績をおさめたにも拘らず、安藤に席を譲らねばならなかった。
中野はその後「私には何が足りないのか」を突き詰め突き詰め、
この年に備えてきたはずだった。
私は、四年前の中野には大いに同情するが、
今年の中野の負けは順当だと思う。
今大会こそ僅差ではあるが、
シーズンを通しての中野のパフォーマンスには勢いがない。
勝負運にも見放されている。
気負いすぎて自分に負け、固くなって失敗し、優勝の機会を逸してきた。
彼女は自分にないものを求めるのではなく、
自分にある魅力を最大限に伸ばすべきではなかったか。
私は4年前の全日本以降、
彼女がトリプルアクセルに跳んだところを見たことがない。
跳んで失敗したところも見ていない。
彼女は、世界中で浅田のほかに誰も持てない武器を、
「封印」してしまった。
トリプルアクセルに頼らず、他の技術を磨くという作戦はわかる。
その結果、彼女は高速ドーナツスピンのほかに、
ビールマンスピンもできるようになった。
表現力やスピンや、いろいろなもののレベルアップも図れた。
だから、
いつかその「封印」は解けるだろう、と思っていた。
私に彼女がトリプルアクセルを武器にした記憶はなかったが、
07/08シーズンは4回成功させているとのこと。
けれど、
今シーズン、彼女はトリプルアクセルに挑戦しなかった。
その上今回のフリーのプログラムには、
ビールマンスピンも入っていない。
どこかで、彼女は路線を間違ってしまったのではないだろうか。
四年前、
私は中野の落選に心の底から憤慨した。
アスリートとは思えない安藤の体型と精神の甘さに
「こんな人を日本代表にしてはいけない」と思った。
しかし、
トリノでの赤恥を喫した安藤は、大きく成長してくれた。
その意味で、彼女がトリノに行ったことを
今はそれなりに評価している。
鈴木は今シーズン、
浅田・中野不調の間隙を縫って中国大会で優勝、
その後急激な注目度アップに戸惑い、実力を発揮できなかった回もあったが、
その失敗を糧にして、
拾ったグランプリファイナル出場権をしっかりものにし
表彰台に滑り込んだ。
この気持ちの切り替えのうまさとド根性は、
きっとオリンピックでも武器になることだろう。
私は常々、
女子フィギュアでメダルを争うためには、
トリプルアクセルか、トリプルトリプルか、ビールマンスピンか、
この3つの少なくとも1つは持っていなければ戦えない、と言ってきた。
鈴木には、
トリプルトリプルも、ビールマンも、トリプルアクセルもない。
けれど、
彼女のスケートには「華」がある。
それこそが、
中野が四年間、苦しんで苦しんで求め続けても持ち得なかった
「私にないもの」なのだ。
個人的な気持ちから言っても、
今私が日本人として世界に見てもらいたいスケートは、
中野の「火の鳥」ではなく、鈴木の「ウェストサイド」である。
これが、
すべての答えなのではないだろうか。
私は、
四年前の中野選手に「華がなかった」とは思わない。
彼女の華は、トリプルアクセルだった。
彼女の華は、その挑戦的な瞳だった。
荒削りでも、失敗しても、
前へ前へとたたみかける野生的な魅力が、好きだった。
今夜は思いっきり泣いてください。
そして、またリンクに戻ってきて。
あなたらしいスケートを見せて。
カッコよくて、元気で、切れのあるパフォーマンスを
私はまだまだ期待しています。

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