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「ゲゲゲの女房」

今見続けているドラマはこの「ゲゲゲの女房」と「龍馬伝」。
NHKのドラマにしか興味ない、わけではないのだが、
結果としてそうなっている。
「ゲゲゲ」は私の娘が初めて毎日見ている朝ドラでもある。
それまで、「たった15分なんて細切れで、続くなんて」
などといって、朝ドラ自体をバカにしていたような彼女が
この時間に合わせて土曜日まで起きてくる。
若い娘が朝ドラにはまる、というだけでも、
このドラマのできの良さがわかる、というものだ。
以来、私たちは
「あの2人はいつ貧乏から抜け出せるのか?」
「水木マンガはいつブレイクするか?」
「鬼太郎のアニメ化は、今週中に決まるか?」
「あの言い方じゃ、イカルは絶対上京して同居するぞ!」
などと、
寄ると触ると「ゲゲゲ」について話している。
とにかく、脚本がすばらしい。
1人も悪人がいない中、善意で生きても行き違いは起こる。
必死でがんばっても報われないことはある。
けれど、
ちょっとした人の温かさ、優しさ、ぬくもりが、
心を前向きにさせてくれる。
そのことを、
誰もが経験するようなささいなエピソードを使って再現する山本むつみの
緻密な手腕とまっすぐな感性にいつも感心させられる。
特にうまいと思ったのが、
水木しげるのマンガが波に乗ってから手伝いに来た、
妹いずみの目を通した描き方。
売れない時代、塗炭の苦しみを夫婦でしのいできた歴史を知らない身、
つまり「ふつうの隣人」に彼らがどう見えるのか。
「お義兄さんは冷たい」「お姉ちゃんは何にもしてない」
「誕生日もちゃんと祝わんで、子どもがかわいそう」と容赦ない。
そんな否定的な見方をしていたいずみにも、
ちゃんと水木家の愛と信頼の形を納得させていく過程にあざとさがなく、
さらに妹の人間としての「成長」まで乗せて描く。
あまりのロジックさに舌を巻いてしまった。
私の年下の友人(かなり若い)も、やはり「ゲゲゲ」にはまっているという。
「大した事件も起こらない日常を15分ずつ描いているのにも拘らず、
 どうしてこんなに魅力的なドラマになれるんだろう?」と
彼女も「ゲゲゲ」を絶賛。
子どもがストーブでちょっとヤケドしたエピソードだけでも
十分なカタルシスだ!と言っていた。
本もいいけど役者もいい!
最近思うのは、特に藍子と喜子の子役2人。
藍子が、
オトナの事情に敏感で先回りしすぎ、イイ子の憂鬱を抱く長女らしさを、
喜子が、
天真爛漫で感情の披瀝が純粋な、いい意味でのマイペースをもった次女らしさを、
演技とは思えないほどのリアリティで毎回活躍する。
今朝は特にボロボロ泣いてしまった。
子どもの前でおそらく初めて見ただったろう父と母との大きな諍いの後、
母が飛び出してしまった、という衝撃を受けた2人が
「お母ちゃんがいなくなった!」と泣く喜子、
本当は泣きたいけれど、じっと我慢して喜子をなだめる藍子を2人が熱演。
特に私は長女だから、藍子には感情移入しちゃう。
藍子は何もいわないけれど、
「泣いたら本当にお母ちゃんが家出したことになる、
 大したことじゃない、すぐ帰る、だから泣いちゃいけない」と
一生懸命自分の中で整理をつけようとする心の叫びが聞こえてくるようだった。
不安げに玄関の戸を開けて母が戻ってこないかみつめる藍子を
塀のかげからみとめる母。
その母の影をみつけて小躍りする藍子。
「お母ちゃん!」と駆け寄る……と思いきや、
藍子はにっこりしながら家の中に入っていく。
なかなか書ける場面ではない。
それぞれが、相手の心の内を見て互いの絆を確信するとともに、
それを伝えることなく宝物のように心にしまっておく。上手い!
ちょっと前の新聞に「ゲゲゲの女房」が支持されているのは、
専業主婦回帰の時代性があるのでは?と書いてあったが、
私は全然違うと思う。
この話は、専業主婦が仕事を持った女性に憧れるところもちゃんと描いている。
仕事を持つ、持たないに関わらず、
自分の生きる場所を見つけ、1人の人間として自分らしく生きていくために、
みんながんばっているし、
誰もが時には何かを犠牲にしている、ということを
きちっと書いている。
いろいろな視点から物事を描いている点、
にも拘らずまったく作品の芯がぶれていない点。
そして、誰もが経験したことのある感情が散りばめられている点。
この3つこそが、この作品の人気の高さだと思う。
こういうドラマが書きたい、と心底思う。
素晴らしい脚本である。

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