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「レベッカ」

「レベッカ」というのは、ヒッチ・コックが映画化したことでも有名な、
デュ・モーリアというイギリス女流作家の作品。
身寄りのない「わたし」は成金アメリカ婦人のお世話係りとして
貴族のリゾートモンテ・カルロに逗留、
そこで出会ったイギリスの大貴族マキシムにプロポーズされる。
夢のような結婚を手にし、幸せいっぱいの「わたし」だが、
年の離れたマキシム、実は再婚で、前の奥さんは事故で死んで1年もたたない。
イギリス・マンダレーの大邸宅に乗り込んでいくと、
なんと、前の奥さんがマンダレーに嫁いでくる前からずっとお世話しているという人が女中頭!
「前の奥さん・レベッカ」の影がマンダレーを支配している。
マキシムはやさしいけれど、レベッカのことを口にすると機嫌が悪くなる。
そして、
レベッカの事故死には、いろいろと謎があるようで、
物語はシンデレラ譚からミステリーへと様相を変えていく…。
このお話を、「モーツァルト!」や「MA(マリー・アントワネット)」でおなじみの
クンツェ&リーヴァイコンビがミュージカルに仕立てた舞台「レベッカ」
モーツァルトでは司教役で存在感を見せつけた山口祐一郎がマキシム役に挑みます。
「わたし」にコンスタンツェもやったことのある大塚ちひろ、
レベッカの忠実な召使、ダンヴァース夫人にシルビア・グラブ。
このシルビアが、本当に素晴らしかった。
劇中何度も繰り返される「レベッカ」という歌を歌うシルビアは、
何かが乗り移ったかのごとき殺気。
まばたき一つせずに主人公の「わたし」をにらみ倒しながら迫っていところなど、
ほんとに恐ろしいです。
マキシムの友人・フランク役の石川禅も、とてもよかった。
地味な役だけれど、歌の一つひとつが丁寧で、
心情がよく伝わってきた。
マキシムの姉・ベアトリス役、伊東弘美の歌声にも説得力あり。
特に弟の気鬱を気遣って歌う「何を悩む」は非常に美しかった。
申し訳ないけど、
他の方は歌が自分のものになっていないのでは?
音域が合わないのか、声がふらついていたり、地声とファルセットの境目がミエミエだったり。
山口さん、大塚さんとも演技のところはよかっただけに、
これは俳優だけの責任ではなく、
クンツェ&リーヴァイの楽曲にも問題があるように思われた。
「モーツァルト!」や「MA」に比べて楽曲の魅力に欠ける。
前述のダンヴァース夫人ソロ曲「レベッカ」以外、印象に残る歌がない。
技術的に難解なのか、歌い手の気持ちが入りにくい曲が多すぎる。
特に序盤。
進行が話の段取りっぽくなって、次々に場面が変わることもあり、
話に流れが見えない。
訳詞がメロディーにのってないのも気にかかる。
デュエットでは男女の音域を合わせるためか中音域を多用、
その分、
せっかくミュージカルスターたちを使いながら、彼らの得意な音域を十分に生かされずじまいだ。
もっと根本的な疑問も。
クンツェとリーヴァイは、「レベッカ」を理解しているんだろうか?
イギリス貴族やアメリカの大富豪を風刺したコメディ・タッチの部分など、
「レベッカ」に必要だったのだろうか?
オーストリア人には、イギリス人やアメリカ人がヘンテコに見える、ということなのか?
演出の甘さも感じた。
アンサンブルは場面によって貴族にもなるし召使にも民衆にもなるのだが、
「貴族」の香りがまったくしなかった。
モンテカルロのホテルに集う面々は、リゾートということもあって衣装がスポーツ着。
ラフな格好をしていても、物腰に上品さやスノッブさが漂っていなければ、
「うわさ話」に立ち止まる人々も、ただの井戸端会議に見えてしまう。
「貴族社会に溶け込めない平民の女の子」という図も一つのテーマなのだから、
こういう点はもっと丁寧に演じさせるべきだったのではないだろうか。
原作からたちのぼってくる陰鬱な雰囲気も、
舞台から浮かび上がってこない。
マンダレーの湿った空気、まとわりつくような草の匂い、よどんだ闇と霧…。
それらがまるで「レベッカ」の亡霊のように「わたし」を苦しめる、という構図が感じられない。
これでは「わたし」をさいなむ原因が
女主人を失ったダンヴァース夫人の怨念だけに限定されてしまい、
物語の奥行きが失われてしまう。
あと味が悪いのも気になった。
ネタバレになってしまうので詳しくは書けないが、
マキシムと「わたし」の最後に感情移入できるほどの説得力を、脚本が持っていない。
真実が隠された「罪」にフタをしたまま、「幸せに暮らしましたとさ」と言われても、
どうにも納得がいかない。
原作に忠実であったとしても、「よかったね」と思えるだけのお膳立てが、
それまでの2時間半で醸しだされていないのだ。
少なくとも私には、
レベッカを失ってもがくダンヴァース夫人の心理、
名門を継いだ弟が幸薄いことに心を痛める姉・ベアトリスの心情くらいしか
心に残るものがなかった。
それはとりもなおさず、
歌を通じて観客に役を理解させられたか、ということにも通じていると思う。
かなり辛口なものいいになってしまいました。
この上、いろいろ言うのもはばかられますが、
シアークリエって、全席同料金なんですよね。
今回は、12500円です。
これって、どうなんでしょうか。
私は5列目の左サイド、舞台はかなりよく見えましたが、
一番後ろの一番奥でも12500円なんですよね?
恵まれていたはずの私の席でも、スピーカーが近すぎて、
俳優は自分の向かって右(つまり舞台中央)で歌っているはずなのに、
歌は向かって左のスピーカーから聞こえてくる!
こんなこと、今まであったかな?
オケピが前面にないせいなのか?
ナマの舞台を観に行ったのに、ナマの声の重量感に酔う、という体験ができなかったのも、
物語に集中しにくかった一因なのかも。
非常に消化不良な舞台でした。

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