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「ミー&マイガール」

帝国劇場での「ミー&マイガール」再演を観る。
とっても楽しい舞台だった。
何より主演の二人、
ビル役の井上芳雄とサリー役の笹本玲奈が抜群。
井上は、血筋は伯爵家の流れを持ちながら、
ダンベスというロンドンの下町で育った粗野な感じを、
早口のセリフまわしにうまく溶け込ませて自然体。
数年前より肩の力が抜け、
歌以外でも成長のあとが見られる。
特に身体の切れに注目した。タップの軽やかさは見事。
これで、あの「大汗」がなくなれば、
さらに見栄えがするんですけど……こればっかりは体質でしょう。
笹本は、ソロの曲が聞かせる。
「ミー&マイ」は特に思いいれのある作品とのこと、
自らの胸の中で熟成された、繊細な表現と豊かな声量。
伯爵家の跡継ぎになるという、
夢のような将来を手にしたビルを心から愛し、
彼の幸せのために身を引こうとするサリーのせつなさと
「それでも笑って生きよう」というけなげさが
歌の中に凝縮されていて素晴らしい。
ビルを立派な伯爵にしようとする公爵夫人のマリアに扮する
涼風真世も、
芸達者なところをみせる。
どちらかというと、コミカルな場面で
彼女の魅力全開。
舞台のツボを心得ている。
マリアの幼馴染で、
実は彼女をずっと愛し続けている男爵ジョンに、草刈正雄。
モデルから俳優になった彼も、
今ではミュージカルの常連だ。
歌い上げるという芸風ではないが、
優しくやわらかい歌声で、懐の深い余裕の演技が光る。
この4人に対し、
ジャッキーの貴城けいとジェラルドの本間憲一が
失礼ながら、いまひとつ。
この二人の歌がもっとよければ
3組のカップルがそれぞれに生きて
文句のない出来になったのでは、と残念だ。
作品としては、
美術のセンスのよさが目をひく。
特に、大道具による伯爵邸の建物。
上品さ、重厚さを損なわない上に、
廻り舞台の使い方では
飛び出す絵本のようなわくわく感があって躍動的。
非常に楽しめた。
物語のほうでは、
「貴族の血」(blue bloodというらしい)にこだわっていたマリアが
振る舞いさえ貴族的になれば、サリーでもOKになっちゃう、
このあたりにちょっと矛盾を感じるのだが、
ビルが最後までサリーへの愛を貫くところにこの話のパワーはあるので、
枝葉末節はカンケイなし!というのが本当のところだろう。
コクニーというロンドン下町なまりが
いかに「上流社会」で拒否されるか、というコトバの問題が、
日本語では表現しにくい、というより、
日本の社会ではあまり理解されにくいので、
「コトバが直った」くらいで、と思われてしまうのは損だな、と思った。
しかし、
そのあたりは十分考えた上で演出もしているとのこと、
「最後に愛は勝つ~!」のおとぎ話を
十分に堪能できる舞台だ。
劇場では、開幕30分前くらいから、
ロビーで楽しいイベントが始まるので、
観にいかれる方は、早めの到着がお得。
また、これからチケットを買う人は、
できるだけ1階がおすすめ。
役者さんと間近で触れ合うチャンスがあります。
帝国劇場での「ミー&マイガール」
まだ始まったばかり。
6月28日(日)まで、続きます。

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