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「ムサシ」@WOWOW&DVD情報


7月18日に放映したWOWOWの「ムサシ」を観る。
実際に舞台に足を運んだのが3月だから、
4ヶ月ぶりだ。
改めて、いい舞台だな、と思う。
特に後半。
「摺り足タンゴ」あたりから物語が絞まって
一人ひとりが生き生きと動き始める。
「話のからくり」を知って最初から見直すと
なるほど、その「前兆」っていろいろ仕掛けてあるな、と気づくし、
最後の、井上さんらしいまとめ方も
とってつけた感なく見ることができた。
観劇直後の感想を読み返したら、
ちゃんとツボは押さえている自分にナットク。
小次郎役の小栗旬がずっと「油断ならない」ムサシ(藤原竜也)を牽制して
小難しい顔をしているのに、
まい(白石加代子)が母親だと名乗ったときから無防備になり、
幼子のような純な顔になったところは秀逸。
「からくり」に気づき始めたムサシにバンバンたたかれても、
ちっとも反応しない呆け方がなんとも自然である。
逆に、
見返してみて改めて気づくのは、
藤原の演技の厚みだ。
直に観たときも思ったが、
戦闘準備にとたすきを掛け、脚絆をつけわらじを履く、
この所作のスピードと正確さ、ムダのなさは
彼が「完璧」を目指していることの証かもしれない。
真の武道家がいったん勝負を決めたら、
それが真剣勝負であり、命のやりとりがあるのならば……。
これから赴く勝負の重みを噛みしめるように、
ゆっくりと身支度する小次郎よりも、
「今襲ってきても対処できる」自分を作る武蔵にリアリティがある。
まいや乙女(鈴木杏)の敵討ちに加担する仕方も、
「指南役」を経験した小次郎が「剣法を教える」という教授型であるのに対し、
武蔵はあくまで実践。
彼女らと仇とのやりとりを用心深く観察しながら、
ここぞというところでそっと指示を出す。
動きは少ないけれど、
武蔵としての動きを考え抜いて演じていることが
クローズアップで見られる映像でこそ再確認することができた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
舞台収録の映像の後に、インタビューが流れる。
小栗、鈴木、藤原の3人の対談は、
若い俳優たちの充実した日々がよく見える。
毎日少しずつしか届かない脚本をホチキスで留めながら、
ちょっとずつ本が形になっていく日々と格闘してきた同志である。
「私はずっとお通をやるものとばかり思っていたのに、『乙女』でしょ?」と杏。
全部の本が届いたのが、初日がひらく数日前で、
「オレ、初めて朝練やったよ。竜也と二人、朝からセリフ合わせして」と小栗。
「蜷川さんはちっともあせってなかったよね。
 俺たちが不安にならないようにそう見せてたのかな」と藤原。
「竜也とはもう絶対やらないと思う」などと毒舌吐きながら、
「同年代の竜也と、遠慮なくお互いにダメ出しをしながらいいものを作っていけた」ことを
 非常にいい経験だったと振り返る小栗。
鈴木も、
「自分も尊敬し、社会的にも評価の高い役者さんたちと一緒に稽古するって
 本当に勉強になる」という。
こうした3人の成長振りを、
目を細めて喜んでいるのが、演出の蜷川幸雄だ。
プロダクションが始まってから、
「彼らには、テレビドラマ的な空間ばかりに身を置いていると、
 本当の演劇の力はわからない。本当の演劇の力を知り、身につけろ」
と言ってきたという蜷川は、
小栗も藤原も、
本が遅れ、こなれていない部分の多かった初日に比べ、
日々「空間を埋めてきた」と語る。
「うまくなった。前より、うまくなったね」
何のてらいもなく「演劇」を語り、ダメ出しをし合い、
高みに高みにと共に進んでいける彼らと共に仕事をする
次のチャンスを思い描いて、
微笑む蜷川。
こんなに機嫌のいい蜷川さんも、あまり見ない。
いい出来だったんだな、「ムサシ」。
そう思いました。
DVDも発売されるとのことです。
ムサシ 特別版 / 藤原竜也/小栗旬
ムサシ / 藤原竜也/小栗旬

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