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「夜と星と風の物語」(「星の王子さま」より)

本日、千秋楽。13:00開演です。
もうすぐ始まります。
お近くの方、間に合いそうな方は、ぜひ足を運んでみてください。
ものすごくいい舞台です!
レビューを読むのは見た後でかまいません。
JR常磐線、東武伊勢崎線、東京メトロ日比谷線、千代田線、半蔵門線、北千住駅からすぐです。
チケットは劇場前の窓口で買えます。
S席6000円、A席4000円、足立区民には割引券などがあります。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
北千住の駅前に、丸井(OIOI)がある。
その丸井のビルの11階に、「THEATRE 1010」(シアターせんじゅ)という劇場がある。
開館して5年。
その記念公園のために、
演劇の大御所・別役実が新作を書き、彼の長年のパートナー・藤原新平が演出。
それが「夜と星と風の物語」である。
この物語は、サンテグジュペリの「星の王子さま」をモチーフにしているが、
別役ワールドは、原作と似ているようで、ちょっと様相が異なる。
砂漠に不時着した郵便飛行機のパイロットが、
夜空に見える星からやってきた王子さまと出会うは出会うのだが、
飛行機が王子さまのお茶会の「テントの上に墜落」しちゃったところから、
この物語は始まるのだ。
せっかく会えた飛行士に、王子さまはお茶をごちそうしたいと思うのだけど、
テントも、椅子もテーブルも、
みーんな飛行機の下敷きで、砂に埋もれてしまっている。
「掘り出す」のは大変だ。
そこで王子さまは、「思い出す」ことにした。
自分のテントを、テーブルを、椅子を、おいしいお茶を。
すると・・・そこに椅子が、テーブルが、お茶をもった女の子たちが現われる!
「王子さま、お茶とクッキーをどうぞ!」って!
飛行士はワケがわからない。「この子たちはどこから来たの?」
王子は言う。「思い出したのさ」
・・・「思い出す」って、自分の「思い」を「出す」ことだろ?・・・
そこにいる女の子も、椅子も、テーブルも、お茶も、
むかし自分の星にいたころの光景を思い出したのだ、と王子さまは言う。
「ここにいる子は、実は今、空に光るあの星にいるんだよ」と。
お茶の席といっしょに「思い出されて」しまった赤いパラソル・赤いドレスの美女が一人。
不満げに王子さまにかみつく。
「勝手に思い『出さない』で!
 今度思い出すときは、『思い出すよ』ってことわってからにして!」
星に置き去りにされた赤いドレスの美女は、
本当は王子さまが大好き。
でも、
王子さまはそんな気持ちに気づいてくれない。
勝手に思い出し、勝手に置き去り。
だから、赤いドレスの美女は、ご機嫌ナナメ。
飛行士も気がつく。
自分も、フィアンセを置き去りにしてきたことを。
飛行機に乗ることも、ちゃんと話してなかった。バッグでぶったたかれて、別れてきちゃった。
どうしてるかな・・・。
すると、トランクを提げ、「バックでフィアンセをぶん殴ってしまった」女性が砂漠に現われる。
飛行士が、思い「出した」から????
こうして、星の王子さまと飛行士の、それぞれの「愛の物語」が、
夜空の星と、砂漠の風と、線路のない駅と、ラクダを連れたキャラバンの男と、
天文学者によって紡ぎ上げられていく・・・・・・。
「思い出す」と「そこにある」という仕掛けが、素晴らしい。
それは、演劇そのものが持つ空間の自在さを、そのまま表している。
「10万の敵軍に囲まれた!」と役者が言えば、観客は「大変だ!」と思う。
そこにいるのが人間で、何の扮装もしていなくても、
「あ! キツネだ」と言われば、「キツネが出てきた」と思う。
「今だ」といえば「今」になり、「10年経った」といわれれば「10年後」になる。
さっきまで山小屋のシーンだったのが、いきなり大邸宅の一室になってもかまわない。
「思った」ものが「現われる」・・・それが、演劇空間の醍醐味だと実感する。
性別不詳、年齢不詳の毬谷友子がワンダーランドを引張るが、
赤いドレスの女性(「星の王子さま」でいう「赤いバラ」)役の池田有希子の
抜きん出た歌唱力が脳髄を震えさせる。
フィアンセ・秋山エリサの透き通るソプラノ、
王子・毬谷友子のクセのあるアルト、
そして赤いバラ・池田有希子の艶のあるJazzyなソプラノ、と
この三重唱の確かさが、「音楽劇」を上質なものに仕上げた。
アンサンブル(星から「思い出された」女の子たちで、チョウ・トカゲ・キノコ・ヒツジ役)
の一人、チョウ役の小山菜穂もうまかった。
彼女は「アニー」でデビュー、ミュージカル中心に活躍している。
クラリネット・チェロ・ギター・ピアノにボイスパーカッションというバンド編成による
舞台上のナマ演奏も気が利いている。
特にボイパーのMalは、時に力強く、時に目立たず、全体をリードしていた。
(飛行機のエンジン音など、効果音も、彼)
線路のない駅の駅長さんでもあり、「天文学はいらんかね~」と天文学を「売る」天文学者でもある
小林勝也は、文学座のベテランらしい確かなセリフまわしで場面を引き締める。
また、二人の男性が前足と後ろ足を担った大きなラクダは、
その動きと存在感でインパクト十分。
終盤、赤いドレスの美女が赤いパラソルを掲げたまま、
大きなラクダに乗せられてゆっくり砂漠を行く上から、キラキラと光が降ってくるシーンは、
幻想的で無類の美しさだった。
別役実は、昨年古希を迎えた。
今までに作ったお話は120以上。
宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を愛した作家は、
ベケットなどの不条理劇も
「バカボンのパパ」の脚本も、
「銀河鉄道999」の脚本も手掛けてきた。
その柔軟で夢見る感性は、70歳を越えた今も健在。
「この世界は、『愛の力』で回っているのです!」
「あの手紙が元に戻れば、あの人とも会えるのです!」
天文学と時空の旅と、人と人を結ぶ心の強さと、
「思」えば「出」せる急転直下の場面展開に身を預けながら、
私は野田秀樹の舞台を思っていた。
あの斬新なパラレルワールドも、実は別役さんから生まれたものなんじゃないか?
日本の演劇の最先端を行く、その自由さを継承する確かな系譜に触れた気がした。
何にしても、ハイクォリティー。
宣伝不足か、
後のほうに空席があったのが何とも惜しい。
今年2月に見た、音楽座のミュージカル「リトルプリンス」に匹敵する面白さだった。
本日、千秋楽。13:00開演です。
もうすぐ始まりますね。
お近くの方、間に合いそうな方は、ぜひ足を運んでみてください。

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