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藤原竜也の「ハムレット」・ハムレットの本質がここに

父の死によって一気に心が枯れてしまったハムレットに「青春の光」はありません。
そこが、若い役者になかなかハムレットが演じられない所以なのかもしれません。
でも、ハムレットの「若さゆえの未熟さ」もまた、重要な要素。
市村ハムレットが、50代の肉体に20代の精神だとすれば、
藤原ハムレットは、20代の肉体に50代の精神とでもいいましょうか。
だから、この二人の演技には驚かされるのだと思います。
最初に登場した時のうめき声から、完璧な死体となった最後まで
見事に演じきった藤原は、
若い肉体と老獪な演技で世紀に残るハムレット役者になったといえます。
私のイチオシ決定版!(2003)
藤原のハムレットは決断ができない。そんな意気地なしの自分が許せない。
藤原竜也のハムレットは、「先延ばし」のハムレットです。
彼は亡き父の幽霊に復讐を誓わせられる。
息子なんだから仇討ちは当然、と思ってみても、なかなか実行に移せない。
言い訳がましく「その瞬間」を先延ばしにしていく。
「本当に悪事はあったのか? 幽霊は本物なのか? どっちを信じればいいんだ?」
そんな折、旅芸人の一座が演じるトロイア落城の場面を見て、
ハムレットは大きく胸を揺さぶられる。
「あの俳優は何だ? 自分のことでもないのに、涙を流している。
あの男にとって、トロイアの王妃ヘカペが何だというんだ。
それにひきかえ俺はどうだ? 父を殺され、母を奪われた張本人なのに、
復讐もせず、のうのうと生きている…」
このまま先延ばしでいいのか、それともすべてを捨てて復讐に賭けるか、
まさにそれこそが「To be or not to be」の真髄なのです。
仇討ちのために、自分の人生を生きられなかった、哀れな男。
学生の楽しみも、恋の甘さも、王太子としての未来も、母の命も。
亡霊の呪縛によって、すべてを失った男の悲劇、それが「ハムレット」なのです。
ホレイショーについてもひと言。
「たががはずれてしまった」世界でただ一人、
友情を保ち続ける男ホレイショー。
狂気と正気、人間の裏と表が交錯するドラマの中で、
唯一安心して見ていられる「不動の」キャラクターは、
物語の軸として、重要な存在です。
なぜハムレットはホレイショーに生きろというのか、
生きるに値する男を、高橋洋は端正に演じています。
これ以上はないと思える演技でした。
*2006年5月27日のMixi日記をもとに書き直しました。
*ネットで探したんですが、DVD情報が見当たりませんでした。
 WOWOWが絡んで、映像は撮っていたのはたしかなんですが。
 蜷川も「映像ならではのカットがあって、素晴らしい出来だ」と絶賛していました。
 もちろん、私は録画では持っています。セルDVD、なかったっけ?
 どなたか情報をお持ちでしたら、おしえてください。

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