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「Shall we Dance?」


Shall we ダンス?
周防正行という監督は、寡作だけれどすごい、と思うことがある。
「しこふんじゃった」「Shall we ダンス?」「それでもボクはやってない」
3つ並べただけで
「弱小相撲部」「社交ダンス」「痴漢冤罪」と、たいていの人ならその内容を思い出せるからだ。
それは、社会的事実に注目し、長いこと取材し、それをもとに映画を製作する、という
彼のスタンスというか手法に関係する。
「それでもボクはやってない」にしても、かなりの時間を勉強や取材に費やしているし、
「しこふんじゃった」に至っては、映画公開後にテレビで特集されたモデル校(東大相撲部)を見ると、
ほとんどそのままじゃないか! 先生の顔までソックリ、というオマケつきである。
社交ダンスを題材にしたこの映画も、
一見華やかで雲の上で、一般の日本人にはまったく接点がないように思えるものが、
実は静かなブームになっている、
その競技人口は、中高年を巻き込んでかなりのボリュームだし、
そこに集う彼らの熱の入りようは、監督の想像以上のものだった!というところから始まっている。
今でこそ「Shall We ダンス」といえば、社交ダンスの代名詞となっているけれど、
この社会的定着度は、周防監督の力。
社会の中にある「ブームの芽」を見出し、それを爆発的に開花させた。
その着眼点の確かさと先読みのセンス、そして大衆的な「?」を忘れない心に感服だ。
この映画は、アメリカでも上映された。
アメリカでは字幕映画っていうもの自体が「ありえない」存在。
だから、日本映画をそのまま持っていってハリウッド映画と競争するのは、
かなり不利である。
自信満々で渡米した周防監督の砂を噛むような日々は、「『Shallweダンス?』アメリカを行く」にまとめられている。

小さな映画館から始まったロードショウは、
やがてさざなみのようなムーブメントを起こし始めるが、
いかんせん、ハリウッドの売り方とは、規模がちがった。
「いい映画だけど、小粒」
「いい映画だけど、アメリカ向きじゃない」
…ということで、
テキさん、アイデアのよさを買い、
英語を話す、アメリカ版「Shall we Dance?」へのリメイクが実現しました!

DVD Shall we Dance? シャル・ウィ・ダンス? (2枚組)
皆さんは、どちらが好きですか?
私は、断然オリジナルだな。
まず「中年男性が、社交ダンスを習う」という話の発端からして、
日本人とアメリカ人では、同じ設定でありながら、持つ意味が違う。
「ダンス」がある意味教養の一部である欧米で「ダンスができない中年」というのは、
それはそれなりにタイヘンなことだろうが、
「ダンスがうまい、フツーのオジサン」が、かなりアヤシイ存在に映る日本とは
全然「重さ」が違うのだ。
ダンス教室に通うのをためらう男は
「今さらダンスなんて」ではなく「ヘンタイに思われたらどうしよう?」なわけ。
キマジメで、「ダンスなんてやらなさそうな男」が
「うまくなったらみんなに見せてやる」ではなく
心から誰にも知られたくない思いがわかるから、見ているこっちも行く末が気になる。
竹中直人扮するラテンダンスおたくも、
「こんな日本人いない!」からこそ抱腹絶倒。
ところが、いつしか「こんな日本人」がここにも、あそこにも…!
最後に、主人公が妻とダンスするシーンも
設定同様、意味がちがう。
役所広司が競技であれほどカッコよく踊ったって、
妻は「みっともない」「私にナイショで」が先に立って、ぜーんぜんトキメカナイんですよ。
アメリカじゃ、この反応、ありえないよね。
オリジナルの「Shall we ダンス?」には、
「え~? オヤジが社交ダンス~?? なんで~~?? ありえな~い!!」
と思っている日本人に
それも、チビとかハゲとかデブとか(失礼)、
世の若い女性が敬遠しがちな人々の挑戦の日々を、
最初は「下心ミエミエ、100%失敗」と、半ばケーベツの眼で見ていたはずが、
いつしか彼らを「カッコイイ」と思わせた。
そして、
「社交ダンスなんか」と思っていたすべての人に、
「私もやってみようかな…」と思わせた。
そこまでのカルチャーショックは、きっとハリウッド版には起こせない。
その意味で、
周防監督はすごい監督だ。
彼の、ちょっとコワイ視線の向こう側に、少し未来の日本が見えている。

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