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「ラフマニノフ ある愛の調べ」

ラフマニノフは、音楽がすべてである。
映画を見ていても、
その「音楽」は、自分の中の「感動」とは、切り離せない。
そう、
ラフマニノフは、
いつでも感動的なシーンに使われ続けてきている。
彼の交響曲が、ヴォカリーズが、画面から響き渡ると、
それだけで体中が「ラフマニノフ」を共鳴させるチェロの胴になってしまう。
そして、私の頭はしびれて、
ある時は、熊川哲也が踊る「ラプソディ」の場面が、
ある時は、伊藤みどりがオリンピックで初めてトリプルアクセルを成功させた
アルベールビルのスケートリンクの銀盤が、
ある時は、キリ・テ・カナワの滔滔と流れるような歌声が、思い浮かぶ。
だからこの
「ラフマニノフ 愛の調べ」という映画を見た私の感慨は、
ほかの人と、ちょっと違うのかもしれない。
ラフマニノフ自身の、作曲に賭ける情熱とか、
亡命して出てきた祖国への思いとか、
ルノアールの庭のように、新緑あふれる幼少期の思い出とか、
そうした映画の差し出すものとは違ったところで、
私は心を乱された。
彼を、そして彼の音楽を支えてきた女性たちの愛と苦労よりも、
彼のことを崇拝し、熱烈に愛していたのに彼のミューズにはなれず、
捨てられ、逃げられた女性革命家・マリアンナに。
プライド高く、ラフマニノフをその愛情の分だけ憎みながらも、
どうしても憎みきれないマリアンナの、切ないほどうつろな瞳。
胸の中に燃え滾る情念を、軍服に覆い隠してアゴをツンとあげる孤独。
アメリカに逃げた有名ピアニスト一家の演奏旅行より、
激動のソ連に残された、恋に破れた一人の女性の心が、痛い。
でも。
とにかく、ラフマニノフを聴きたくなる映画なのだ。
映画館にCDが売っていたら、
絶対に買ってしまうだろう。
4月19日より、Bunkamuraル・シネマ(渋谷)、銀座テアトルシネマにて公開。

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