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「二月大歌舞伎」@歌舞伎座(夜の部)

田舎から江戸に商売で出てきた佐野次郎左衛門(勘三郎)が、
みやげ話にとふと立ち寄った吉原でおいらん道中に遭遇、
八ツ橋(玉三郎)の美しさに魂射抜かれて、
そこから吉原通いが始まる。
田舎商人とはいえ、相応に小金のある身、
みるみる上得意となって、
はては八ツ橋を身請けという話にまでなってくる。
ところが、
八ツ橋には堅気のころからの思い人繁山栄之丞(仁左衛門)がいて、
彼は八ツ橋に身請け話など寝耳に水、と八ツ橋をなじる。
八ツ橋は繁山への心中立てをするために
満座のうちに佐野を袖にし、郷里の者を連れてきていた佐野は、大恥をかくことになる。
それから四ヶ月、
佐野は再び八つ橋の元へ。
「前のことはすべて忘れ、もう一度、初めての客としてやり直したい」
しかしそれは、
復讐のための口実に過ぎなかった……。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
有名な吉原での八ツ橋おいらん道中の場は、
この「籠釣瓶花街酔醒(はなつるべ・さとのえいざめ)」
冒頭の場面である。
あそこからここから、いくつものおいらん道中が行き交いつつ、
最後に出てくる八ツ橋=玉三郎の、いっそうの華やかさ。
へ~え、これが吉原、これがおいらん道中かえ、と、
次郎左衛門と同じ、おのぼりさん気分で口をポカンとあけて見入ってしまう。
玉三郎はおいらんぽっくりをちゃんと八の字にまわして花道を歩いていった。
筋書き(パンフレット)の中で玉三郎が八ツ橋について、
「『助六』の揚巻や『廓文章』の夕霧とちがい、
 肚(はら)というよりは根無し草の女性です」
と語っている。
遊女といえどもおいらんとなって、誇りと気風を持って生きる女性、というより、
今の身の上を流されて生きる、といった感じだろうか。
好きな繁山には高価な着物を買って与えるなど貢ぎに貢ぎ、
自分を贔屓にしてくれる佐野に対しても、
いいお客さんとしてそれなりに好意を感じる。
絶好の身請け話、と茶屋がどんどん話を進めていくなかで、
いいとも悪いとも態度を表明しないまま、
ずるずるとその日を迎えてしまうような女である。
そして「なんでオレに一言言わないんだ?」っていう繁山に会ってしまえば、
「悪いなー」と思いつつ、身請けなんてイヤ、あんたなんかキライ、と
ミもフタもない絶交言い渡し。
そんな女性でありながら、哀れを誘うのは、
やっぱりそこに「遊女」という身の上を感じさせるからだろう。
繁山だって、「かたぎのときから好いた人」とか言うけれど、
今やおいらんの稼ぎをあてにしているヒモ的存在だし、
その繁山に身請け話が進んでいることを言いつけた釣鐘の権八(弥十郎)も、
八ツ橋の父親代わりとかいって、何かにつけて金をせびりにくる。
おいらん、おいらん、と表では持ち上げられながら、
周りの男たちは八ツ橋に稼がせ、むしりとっているヒモなのだ。
そんな男たち、そして自分を「買って」商売させている店の主人、
彼らの言うことに逆らわずにたゆたうように生きている八ツ橋には
「自分」などというものを持てるはずもない。
歌舞伎ではお決まりの
「それは、さあ」「さあ」「さあ、さあ、さあ、さあ、……」という押し問答に、
本当に困ってしまった八ツ橋を感じた。
こう考えてみると、
おいらん道中で目があった佐野に
うっとりするほどの流し目をしてやった八ツ橋の、
遊女としての手練手管も日常のことだと思うし、
お客さんには誰にでも、できる限りのサービスができる適応力が
彼女を一番の稼ぎ手にした、というのもわかる気がする。
あまたの男たちの相手をさせつつ「オレがお前の間夫だから」と
威勢だけはいい繁山に、
請われもしないプレゼントを贈りまくる八ツ橋の心情が
哀れでならない。
佐野をこきおろした座敷をあとにするとき、
閉める襖の陰からちょっと後ろを気にして
申し訳なさそうな顔をする、というところまで造形する玉三郎に
「役を掘り下げて演じる(タイプの)人物とは違う」八ツ橋にも
さまざまな心の起伏があることを見せる工夫を感じた。
夜の部は、ほかに「高杯」と「壷阪霊験記」。
「高杯(たかつき)」は、下駄でのタップ・ダンスを取り入れた、という演目。
下駄のタップといえば、
最近では北野武主演の「座頭市」での群舞が印象的だったけれど、
六世尾上菊五郎によって、すでに昭和8年、
歌舞伎の板の上でタップダンスとの融合が生まれているわけですから、
歌舞伎というものが、どんなに時勢に敏感であるかがわかります。
「壷阪霊験記」は、目の見えない夫(三津五郎)とその美しい妻(福助)の話で、
夫は妻の足手まといにならないようにと覚悟の投身自殺、
妻も後を追って飛び降りるものの、
二人は観音様の霊験で生き返っただけでなく、
夫の目も見えるようになる、という話です。
美しい夫婦愛の話なのでしょうが、
暗い話ながらコミカルなやりとりもある、というそのギャップに、
私は少し置いていかれました。
あと、
観音様役の子役さん(玉太郎)が、あまり霊験あらたかな感じじゃなかったので、
それもあって、感情移入できませんでした。あしからず。

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