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「マクベス」


シェークスピアの古典名作を”鬼才”ポランスキー監督が映画化!DVD未発売。■マクベス■
人はどうやって良心をおしのけ、罪を犯すに至るか。
殺人の罪の重さとどう闘うか。
あるいは、どんな心情で罪を重ねていくか。
ロマン・ポランスキー監督の映画を見ると、
こうした心の動きが非常によくわかります。
地図のないまま道を歩く頼りなさ。
それを避けようとしたところから、悲劇は始まります。
自分の頭で考えて進むより、
「予言」という「到達地」から逆算して行動する方が、
ずっと簡単に思える。
「マクベス」は、王に忠実な男が3人の魔女に「あんたは王になる」と言われたことで野心を持ち、
その予言に振り回される心理を描いた作品です。
洗っても洗っても落ちないと感じられる手の血のりの幻影に苛まれるマクベス夫人の狂乱など、
たくさんの舞台、映画になった「マクベス」において、その名場面の描き方が競われています。
その昔、「マクベス」だとも知らず、
途中からなのにテレビの画面に釘付けになって、そのまま見てしまった、
このロマン・ポランスキー版。
まだ若かったし、もともとスプラッター禁忌体質な私、
賢王ダンカン暗殺の壮絶さ、血塗られた手の生々しさは、
今も私の脳裡から離れたことがありません。
殺人者の醜さが、画面から飛び出してきそうなんです。
彼は妻を惨殺された後にこの映画を作っています。
それを知った時は、あのナイフで自分の胸を突き刺されるような
痛さがよみがえってきました。
唐沢・大竹の蜷川マクベスとか、黒澤の「蜘蛛の巣城」とか、
私の「マクベス」体験はいろいろありますが、
やっぱり「初体験」は忘れられない。
今日、WOWOWでやっていたので、久しぶりに全編通して観ると、
もう一つ、ふと感じたことがありました。
残虐で理不尽な王に統治される民衆の苦しみ。
「誰がやったか」うすうすわかっていても、下の人間は何もできない。
密偵や密告・暗殺がはびこり、微笑みの下に裏切りがある。
あるいは、亡命した後に残された家族・友人の運命。
まだ粗野で貧しい昔のスコットランドという設定、
そして「シェイクスピア」という大文豪のコトバを隠れ蓑に、
ポランスキーが告発した「同時代」が、かいま見えました。
ポーランドに生まれ、収容所も経験し、「自由の国」アメリカで妻を殺された男にとって、
「殺人」は、バーチャルではありません。(1971)

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