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「紋章が語るヨーロッパ史」


紋章が語るヨーロッパ史
ヨーロッパの歴史を語る上で、図像学というのは欠かせない。
ただの裸婦像だと思っていたら、アダムとイヴのイヴを重ね合わせていたり、
つけたしのようにそこにいる羊は、単なるペットじゃなくて「犠牲」を表していたり・・・。
そのことを深く深く感じたのは、
放送大学で若桑みどりさんの「イメージの歴史」の講義を聴いたときでした。
ですから、「紋章が語るヨーロッパ史」という本を本屋さんで見つけたとき、
すぐさま買ってしまいました。
私の知らない「図像の意味」をおしえてくれる気がして!
その日から半年以上が過ぎてしまいましたが(笑)、
読み始めたら、あっという間に読み終わってしまった!
とてもわかりやすく、面白い本でした。
「紋章」が、中世の騎士のの形だった、というのは、ナルホド、の一つでしたが、
「ワッペン」という言葉が「武器」を表す言葉だったというのは驚き。
「トーナメント」という言葉も、何げなくスポーツで使っているけれど、
もともと、中世騎士の団体騎馬戦みたいなものを「トーナメント」と言ったらしい。
こういうのって、今と昔がつながってるって思いませんか?
そうそう、
「バナー」っていうのも、中世と関係があるんです。
日本でも、武士が掲げていた幟(のぼり)のようなもの。
長方形ののぼり旗を、「バナー」と呼んでいたとか。今やネット広告だもんね。
ヨーロッパの紋章は「個人」にあるもので、
そこが日本の「家紋」とちょっと違う。
紋章をそのまま引き継げるのは長男だけで、あとは色を変えたり模様をちょっと変えたり。
どんどん複雑になっていって、
それで廃れていった部分もあるといいます。
それにしても、半分ずつちがう模様とか、四分の一ずつちがう模様とか、
好きにデザインしてたわけじゃないんですねー。
いろいろルールがあって、
「紋章官」とか「紋章院」など管理するところもあって、
ビックリです。
一つだけ、
今までカンチガイしていたかも、と思ったことがありました。
第二次世界大戦で敗戦国となった日本とドイツ。
ドイツはナチが使っていた「ハーケン・クロイツ(鉤十字)」の旗を捨てて、
国旗を新しくしたけれど、
日本は戦中と同じ日の丸を使っている。
そのことで、「ドイツは精算したけど、日本はまだひきずっている」と評する向きがありました。
でも。
ドイツは「鉤十字」は捨てたけど、実は、
「神聖ローマ帝国」のシンボルとして長く紋章に使ってきた「鷲」は
ナチの前も、ナチの時代も、そして今も、ずっと使い続けているのです。
ドイツの国旗の黒・赤・金(黄色は金の代用)も、昔むかしから使われている色だそうです。
民族のアイデンティティを背負った図像というものは、
ある意味政治形態より長く生きながらえるのかもしれません。

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