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「BOBBY(ボビー)」

ジョン・F・ケネディ大統領の弟で上院議員のロバート・F・ケネディが
民主党の大統領候補に名乗りを上げ、
その予備選のさなかに暗殺された、1968年6月5日。
この日、現場となったアンバサダー・ホテルに集ったさまざまな人々の
悲喜こもごもな人間模様を描きながら、
「1968年」の世相を抽出し、同時に「2008年」をあぶりだす。
これは、そんな映画です。
形としては三谷幸喜の「有頂天ホテル」同様、
「ホテル」にそのとき居合わせた人々の群像劇。
ケネディの選挙対策に追われる人あり、
そのホテルのドアマンを長年やってきた老人あり、
落ち目の歌手とその亭主あり。
密入国でホテルの厨房で働くメキシコ人や、
その日クビを言い渡された食品部長や、
不倫している電話交換手もいる。
LSDでトリップするヒッピーあり、
ベトナム行きを阻止するために偽装結婚をしようとする若者あり。
別々にうごめく人間関係が、ボビー暗殺のその瞬間、
どのように集約されていくか、そこが見所です。
アンソニー・ホプキンス、マーティ・シーン、シャロン・ストーン、デミ・ムーア、
イライジャ・ウッド、ウィリアム・メイシー、ローレンス・フィッシュバーン、等々々・・・。
監督・脚本は、マーティ・シーンの息子、エミリオ・エステヴェス。
ハリウッドスター総出演とみまごうこの映画で、彼は何を言いたかったのか。
いわゆる「ボビー暗殺事件の真相を探る」みたいな映画ではないので、
そう思って映画館に足を運ぶと、肩透かしをくらいます。
でも、ボビーがどんな社会を目指していたかはわかる。
そして、今に生きるアメリカ人が、
ボビーの「理想」にすがろうとしていることも。
「プラハの春」もパリの「五月革命」も、そしてキング牧師の暗殺も。
1968年とは、世界にとってメルクマールとなる年だった。
2007年の今、アメリカは、どうしようもない袋小路にはまっている。
それはアメリカ人が愚かだからじゃない。
ただ、選択を間違えただけ。
あの時、ボビーが生きていたら。
あの時、ボビーを選んでいたら。
今からでもボビーの言葉を聴いて、理想の社会を実現しよう。
そんな声が聞こえてくるような、
アメリカ人の、アメリカ人による、アメリカ人のための映画、
のように思えた。
当時の風俗や音楽などをふんだんに取り入れているので、
それらを楽しむこともできる。
「ボビーって?」「ロバートって?」という世代の人には、
今の話としても見られる映画でもあります。
それにしても、
政治はテロで時計の針を逆戻りさせられる。
テロはささやかな庶民の生活をも一瞬で奪う。
それの連続で、ここまで来ていると実感させられました。
BOBBY」公開は2月24日より、TOHOシネマズ系を中心に。

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