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「アイランド」


アイランド
2019年(あまりにも近すぎ近未来でこわい!)、
クローン技術を駆使して金持ちたちは自分のスペアを作り、
「万が一」の保険としている。
そうやって作られたクローンが、自分たちの立場に気づいたときどうするか。
また、「臓器移植の臓器」だけがどこかで培養されていると思っていたら
自分とそっくりのクローン人間が目の前にやってきた時、
人は一体何を思うのか?
「なぜ私たちの存在を隠すのか?」
「ハンバーガーになる牛を、誰も見たくないだろう」
これが、この映画のテーマのすべてなのです。
ハワイでスキューバ・ダイビングをおしえてもらった現地のインストラクターに
「Don’t eat fish. Eat meat!」と言われたことがあったっけ。
アメリカ人にとって、「牛」は食べていいけど「鯨」は食べちゃいけない。
その理由は
「牛は食べるために人間が育てたものだから。鯨は野生だから」です。
つまり「家畜」には感情がない。「家畜」は「パン」と同じなのです。
そこが、日本人にはなかなかわかりにくい。
同じ動物なのに。
家畜だって、感情はあるよね。子どもを売られりゃ寂しいよね。ぶたれりゃ痛いよね。
「そんなはずはない」という人々に対し、この映画は異議を申し立てているのです。
クローンだって、人を愛し、憎み、痛みを感じ、生きたいと思う、と。
しかし、アメリカ人は、などと言ってはいられません。
人間が人間を差別してきた歴史は、すべてここに端を発します。
「同じ格好をしているけれど、違う」と思ってしまう何かを
人間は持っているのです。
その対象が敵国の人だったり、特定の民族だったり、人種だったりします。
「同じ人間だ」と思えるか、
「あいつらとは違う」と思うか。
それが、私たちの世界の未来を決めていくのです。
いろいろ考えさせてくれる映画なのですが、
公開時(2005年)、あまりヒットしませんでした。
テーマの高尚性とビジュアルな娯楽性とがてんこもり、という作りにも問題があったかもしれない。
「宇宙戦争」などなど、ハリウッドではSF超大作がめじろ押しだったから、という人もいる。
私は、どこを切っても出てくる「既視感」がその理由だったのではないかと思います。
ある人にとっては「ブレードランナー」、
ある人にとっては「トータルリコール」。
ある人にとっては「マトリックス」。
「スターウォーズ」や「バニラ・スカイ」の1シーンをほうふつとする場面もある。
監督マイケル・ベイの、今までの作品を思い浮かべる人もいるらしい。
その映像がどんなに美しく、
そのアクションがどんなにかっこよく、
言わんとしていることがどんなに素晴らしくても、
「どっかで見た」という感覚は、人を前のめりにはさせてくれないものです。

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