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「はだしのゲン」


はだしのゲン(全10巻)(NDC726)
世界中で読まれている原爆のマンガ「はだしのゲン」。
昨日と今日の前後半の2回を放送します。
意外にも、実写によるドラマ化は初ということでした。
戦争のこと、原爆のこと。
今までたくさんの作品を見てきましたが、
きのう見た「前半」、本当に素晴らしいドラマが作られた、と
心から思いました。
何がそんなによかったのか。
「原爆は悲惨だ」「戦争はいけない」
そんなことはわかっている。
問題は、
その時を生きている人たちの心もようを
私たちが追体験できるか、ということなのです。
父親が戦争に反対している、非国民だといって、子どもがいじめに遭う。
その子どもが父親に、「戦争に行ってくれ、アメリカ人を殺してくれ」と頼む。
妊娠中の母親のためにとっておいた貴重なイモを、
その母の分を奪っても食べたいと思う幼い子ども。
そうした、私たちが「アタマ」ではなく、「カラダ」で共感できるエピソードを
このドラマはとても丁寧に描いています。
子どもたちは、父親を軽蔑しているのではないし、
母の体がどうなってもいいと思っているのではない。
でも、現実の苦しみに直面した時、私たちは「アタマ」だけで生きていけない。
それをしっかりと提示した上で、
それでも「アタマ」で考えずに「カラダ」だけで動いていった結果が
一体何を引き起こしたのか。
そこを問うているのが、この作品なのです。
圧巻は、
「絶対に戦争に行くな」といって
入営する長男(中尾明慶)を見送りに行かなかった父(中井貴一)が、
長男の乗る列車に向かって声の限りに「万歳」を唱えるところ。
「戦争に反対」「人殺しはするな」は「アタマ」。
「息子よ、一日でも長く生きろ」は「カラダ」。
戦争に反対している男と周囲も知っている家の前や駅ではできなかった「万歳」を、
父は息子のためだけに、河原に一人たたずんで叫びます。
その、父のやるせない思いを感じて、
父に反駁する長男も、座席でおいおい泣いてしまうのです。
ひもじい思いを通してようやく今日収穫、という金色の麦畑も、
原爆投下とともにすべて焼けてしまいます。
家の下敷きになった父と弟、そして姉を助けられずに、
半狂乱で泣き叫ぶ母(石田ゆり子)。
冷静で、父と一心同体、家族を切り盛りしてきた母が、
もう「何も考えられない」状態になってしまった。
身が引き裂かれるほどの半狂乱。
火のまわりの早さに「ゲンを連れて逃げろ」と父は言うけれど、
母は
「いやー! 離れるのはいやー! 私もここで死ぬー!」と動こうとしません。
「どうすればいいんじゃー?」
まだ息のある父や弟をこのまま火の海に置き去りにして、
母と逃げる決断をしなければならない小学生。
原爆は知らないけれど、
戦争は知らないけれど、
この気持ちは、誰にでもわかります。
こうしてキーをたたいていても、
あとからあとから涙がこぼれてやまない。
実は、
私は「はだしのゲン」の原作を読んだことがありませんでした。
もちろん「原爆のマンガ」で「すばらしい作品」だということは
「アタマ」では知っていたけれど。
今夜、原爆投下後のゲンたちの物語が
また始まります。
ぜひ、ご覧ください。

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