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漫画「金色のガッシュ!!」の作者、小学館を提訴

フジテレビでアニメ番組にもなった「金色のガッシュ!!」の作者・雷句誠さんが、
自分の描いたカラー原稿を預けた編集サイドに紛失された件で、
小学館を提訴しました。
直接のきっかけは「賠償金額が安すぎる」というものですが、
出版社側が提示してきた「賠償金額」に、
まんが作家に対する編集者の考え方が表れている、そこの改善への第一歩になれば、
というのが、雷句さんの真意のようです。
「ストリベリーショートケイクス」という映画の中にも、
イラストレーターが何日もかけて仕上げた1枚を、
新米編集者が紛失してしまい、編集部に行って抗議すると、
「また描けばいいでしょ」とお茶を濁すように笑いながら軽く言われ、
非常にショックを受ける場面があります。
ゼロからものを作っていく人たちの産みの苦しみを
「お産婆さん」役ともいえる自分担当の編集者がちっとも理解してなかったとしたら、
「いいお産」には絶対つながりませんよね。
本来なら、背中さすって励まして、
そばで一緒にがんばって、作った苦しさも喜びも分かち合いたい人です。
その人とコミュニケーションがうまくとれない、信頼関係が結べないまま、
ただ
「この人のご機嫌を損ねたらうまく産み落とせない」という不安を抱えてのお産。
つらすぎます。
実は、
私の学生時代の知人が一人、小学館に入社していて、
新入社員のころは漫画雑誌の編集部に配属されていました。(今を去るウン十年前)
入社して数年、久しぶりに学生仲間で会うことになったその日、
彼は大幅に遅刻してきて、ちらっと顔を見せると、また「仕事だから」といって抜けていきました。
土曜も日曜もなく、ほとんど家に帰れない、たいへんな仕事だ、と言っていました。
彼はどんなふうに編集の仕事をしていたのでしょうか。
よく漫画家さんの家(仕事場)に泊り込んでいたような…。
雷句さんのいう「仕事をしていた」編集者の中に入っていてくれていると私は思っていますが。
彼の結婚式のとき、
仕事仲間が、当時花形雑誌だった「Focus」の体裁(もちろん白黒コピー)で
新郎新婦をまるごと紹介する読み物を作って披露宴で配っていました。
そのころ既に人気の高かった有名な漫画家さんも参加してくれていたりして、
有名人とは縁の薄い私たちは、「すごーい!」などと無邪気に感心したものです。
きっと信頼関係はあったのではないか、そんなふうに思いたいです。
提訴の内容を見て、
私がもっとも驚いたのは、
「ガッシュ」ほど有名なマンガを描いている雷句さんでも、
白黒の原稿を1枚1万3000円程度で請け負っていたという事実。
アシスタントも雇わないとできないし、
週刊誌の締め切りはきついし、
ギャラは後払いだし、
そんな中で、この金額なのか…。
そういえば、よくテレビに出ている有名な漫画家さんが以前
「マンガは単行本になって初めて息がつける」といった発言をしていました。
最初の原稿料は、ほんとに安い。
それが単行本になったり、アニメや映画の原作になったり、キャラクター商品の版権を得たり、
そういう二次的三次的なところでようやく利益が発生する、ということでしょうか。
だからこそ、雷句さんは
「若い漫画家のためにも」自分がここで安い賠償金に納得してはいけない、と言っているのでしょう。
副次的な価値も、最初に生み出されたオリジナルがあってこそ。
そのオリジナルをこの世に誕生させたことが自負となり、誇りとなって
周りからもその価値が正当に認められなければ、
いい仕事をする人はどんどん減っていってしまいます。
折りしも、
往年ヒット作をとばし続け、売上部数も天井知らずだったマンガ誌が
次々と休刊に追い込まれています。
マンガだけでなく、
出版界は今、
「出版不況」という言葉があいさつ代わりになるほど日常化しているようなありさま。
なぜそうなったのか。
ネットのせい、とか、携帯のせい、とか、
単に「若者の雑誌離れ」などとひと言で片付けずに、
その「理由」をしっかりと検証していかなければ、事態は好転しないのでは?
その責任は、
編集者側にも、ものを書く私たちにもあります。
そしておそらく読者にも。
すべての力と心を結集し、みんなで活字文化を楽しみ、
いいものをたくさん残していきたい。
すそ野も広げていきたい。
雷句さんの訴訟の文は、彼のブログの6月6日の日記に全文載っています。
「訴訟文」というと、ものすごくカタそうに感じるかもしれませんが、
雷句さんは、とてもわかりやすい言葉で書いているので、
普通の文章として読めます。
また、
「そうしなければ何も変わらない」という信念のもと、関係編集者の実名をガンガン出して書く一方で、
「たとえ反論であっても、実名で意見を表明している人を尊敬する」
「みんな仕事をもっているので、仲間を巻き込まないように一人でやっている」など、
この問題とこれからどう取り組もうとしているのか、彼の覚悟も見えてくるので、
いろいろなところでニュースを目にすることもあるでしょうが、
関心を持った方には、
それこそ「二次的」な部分だけで判断せず、全文を読まれることをおすすめします。
ただし、訴訟文というのは、その性質上、一方だけの意見です。
これが客観的にみて正当な訴えかどうかを、これから裁判で争う、ということになるのですから、
裁判の行方や、出版社側の発言などにも耳を傾け、
冷静にこの問題を考えていきたいと思っています。

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