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「ラ・バヤデール」~ガムザッティはここにいる


私がハンドルネームにしている「ガムザッティ」。
これは、「ラ・バヤデール」(または「バヤデルカ」)というバレエに登場する女性の名前です。
舞台はインド、ヒンズー教の寺院付きの踊り子ニキヤと貴族のソロルは相思相愛の仲なんだけど、
ニキヤは寺院の生臭坊主に横恋慕されるは、
ソロルは婚約者を勝手に決められるはで、きびしい恋路です。
その婚約者・つまりニキアの恋敵の名前がガムザッティ。
上だけ読むと、ガムちゃん悪役ですが、彼女は単に親のいいつけ通りの人を愛そうとしただけ。
ソロルはニキヤに「お前だけだよ」とか言いながら(踊りながら?)、
若くてきれいで、家柄もいいガムちゃんにも愛を囁いちゃったりするわけです。
こういう二股どっちつかずの男は、バレエではよく出てきます。
私が観た最高の「ラ・バヤデール」は、こちら。
ラ・バヤデール / 英国ロイヤル・バレエ
踊り子ニキヤにアルティナ・アスィムラートワ、主人公ソロルはイレク・ムハメドフ、
ガムザッティはダーシー・バッセル、生臭坊主のバラモンにアンソニー・ダウエル、
そしてブロンズアイドルは、われらが熊川哲也!(当時19歳)
熊川の伝説的パフォーマンスが見たいがためだけにLDを買い(当時VHSは絶版)、
LDを見るためにLDプレーヤーを質屋で買った私。
それだけの価値はありました。
金粉塗りたくった熊川が、鎮座まします神像で、それが踊り出すという三幕の初め。
筋にはまったく無関係だし、彼の出番はここだけだけど、
劇場全体が彼の風切るスピードと旋回とジャンプに圧倒され、空気が一変します。
まさにこの世のものとは思えない!
それじゃあ、この場面しか見所がないかといったら、いえいえ、そんなもんじゃありません。
やっぱり主役どころは人物を精緻に描写して、見るものの心をがっちりとつかみます。
裏切られたニキヤ。
哀しみだけではなく、ソロルを拒否する誇り高さも持ち合わせて凛とした佇まいが潔い。
こんなに愛しているのに振り向いてもらえない、というバラモンの苦悩。
二人の女性の間で迷いに迷うソロルの弱さ。
それらがきちんと「バレエ」で表現されている。
有名な「白の群舞」も美しい。
二幕の初め、一人、また一人と白いチュチュのバレリーナが列をなして登場するところは、
その神々しさは、例えれば、かぐや姫を迎えにきた月の使者。
一つの恋が死んだ、その恋が天に召される儀式のよう。
月の光の中で、ニキヤが魂として蘇る、美しい場面です。
ガムザッティが、ただの当て馬(失礼!)に見えないのは、
やっぱりダーシー・バッセルのはじけるような若さと輝きでしょう。
アスィムラートワはうまいけど、この「若さ」はないの。
残酷。
やっぱ、若いって、それだけで「武器」になるって、一目瞭然なのです・・・。
バレエって、なかなか人生勉強になるのよー。
え?私? もちろん若くて、きれいで、金持ちで…なわけ、あーりません(笑)。
ハンドルネームは大好きなバレエからとろう、とは決めていた。
でも「ジゼル」とか「オデット」とか「オーロラ」はきっと他にもいるだろうし、
第一「ジゼルさん」とか言われて、自分という感じはちょっとしませんので。
ガムザッティは、主役じゃない分、ついているイメージが少ないな、と思って。
ガムザッティは報われない女性です。
無垢ともいえる。
優柔不断男・ソロルの心理など、知るよしもない。
踊り子ニキアと二世を誓いながら政略結婚を断ることもせず、
ニキアを失うと麻薬に溺れて現実逃避、ニキアの亡霊に悩まされ苦悩するソロル。
ガムちゃんはまだオトナの女じゃないから、そんな男と女の事情はわかりません。
ソロルも、きっと物足りなく感じただろうね。
(それでも「若くてきれいで金持ちだから、ま、いいか」くらいには思ってたかも。許せん!)
同じような体験があるわけではないけど、
ドラマでは「主役」より「脇役」の人生に関心を持つことが多いです。
たとえば、たまたま悪代官に仕える下級武士が「かかれ~!」といわれて
正義の味方桃太郎侍なんかに斬りつけ、一太刀でやられちゃう。
この下級武士は、なんで死ななきゃならなかったんだろう?
職務に忠実だけだった警察官ってとこだよねー。
その男の家族とかに、思いを致してしまいます。合掌。
ちなみに、熊川哲也はソロル役も得意としています。
Kバレエの「バヤデール」、早く見たいものです!
Kバレエは女性陣が充実しているので、今ならどんなニキヤ/ガムザッティも思いのままですね。
92年にロイヤルが来日した時にやっているヴィヴィアナのニキヤも見たいし、
吉田都のニキヤもいいし。
松岡梨絵の挑戦的なガムザッテイ、神戸里奈や東野泰子の無垢なガムザッティも見てみたい。
いろいろな組み合わせを想像するのも楽しいです!

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