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「サ・ビ・タ」@本多劇場

韓国のミュージカル「サ・ビ・タ」というから、
「サビタ」という言葉に意味があるのだと思っていたら、
「TDL」というより「KY」みたいな略語だったと知る。
「サランウン ビルル タゴ」=「愛は雨に乗って」というのが、
本当の題なのだそうだ。
両親を早くに亡くして、3人の弟妹を養うために
音楽家への夢をあきらめた長男ドンウクと、
そのドンウクにピアニストの夢を託されてしまった末の弟ドンヒョンの、
愛ゆえに心が離れた7年間の終着駅での感情の爆発を描いた物語。
家族を大事にする韓国ならではの、熱~い家族愛の物語。
だけど世話を焼きすぎる身内を重たく感じるのは、
韓国の人でも同じなんだ、と思った。
長男ドンウク役の駒田一は、
最初は世話焼きの専業主婦みたいなノリだけれど、
いつも笑顔のドンウクが心の内側にためこんだ苦悩を吐き出す
後半が圧巻。
思わず涙がこぼれる。
ドンヒョンの山崎育三郎は、
「ラ・カージュ・オーフォール」で見たときからそんなに経っていないのに、
信じられないほど伸びた。
スケールが大きい。緩急自在。
声が伸びやか。
存在感がある。演技力が増した。
これは「モーツァルト!」が楽しみだ。
この二人、
ラスト近くにピアノを弾く。本当に弾く。多才だ!
不器用でなかなか本心を語らずぶつかってばかりの兄弟を
一歩ずつ近づける触媒となるのが、
家を間違って入ってきてしまったイベントガール、ユウ・ミリ役の原田夏希。
原田のことはテレビでは見たことがあるが、
舞台では初めて。でも2008年の初演からこの役を演じているという。
駒田、山崎にはさまれると歌唱力の落差はいなめないが、
声はよく出ているし、
さすが初演からやっているだけあって、
非常にテンションの高い演技が要求されるのに、わざとらしさがない。
このテンションの高さは、韓国人ならではのところがあるのだが、
違和感なく嫌味もなく、
純粋におっちょこちょいで朗らかな女性を出現させている。
ダイナミックな展開があるわけでもなく、
舞台装置もドンヒョンの部屋のみであるだけに、
「ホームコメディ」的なこぢんまりした物語なので、
歴史物、時代物といったドラマチックな舞台ではない。
見ていて楽しく、やがて悲しく、そしてハートウォーミングな佳作だ。
いい話なのだけれど、
「サ・ビ・タ」というタイトルはどうなんだろうか?
これで多くのお客さんが「行こう」と思うだろうか?
「TDL」が「東京ディズニーランド」だとわかるのは、
東京ディズニーランドが有名になってから。
おそらく「サ・ビ・タ」も、韓国では超ロングランで有名だから、
略して「サ・ビ・タ」と呼ぶんだろう。
愛称としてはいいよね、観た人の間で話題にするときとか。
それに副題になっている「雨が運んだ愛」が前面に出てたらどうかっていうと、
これがいい、とも思えない。
うーん、タイトルって難しい。そして
タイトルって大切。
*私が行った4/1はアフタートークに
 中日劇場での「レベッカ」が終わったばかりの吉野圭吾さんが
 来ていました。
 客席には山田まりあちゃんの姿も。
 舞台と客席が近く、一体感のある本多劇場で、
 物語が終わってもまだ役者さんともども、
 アットホームな時間を過ごせたような気がします。

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