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東宝ミュージカルアカデミー「ダンス試演会」

2/25と2/26、東京・豊洲のダイジョースタジオで、
東宝ミュージカルアカデミー(TMA)第4期生によるダンス試演会があった。
4月に入学した4期生たちの試演会は今回で5回目。
シェイクスピアや菊田一夫作品といったストレートプレイに挑戦させたり、
ミュージカルナンバーをやったり、と
4期生のさまざまな面を引き出そうと行われていて、
彼ら彼女らの若いエネルギーを、たくさん浴びることができる。
私は最初の1回を除いてすべて出席。
今回は、名だたるミュージカルナンバーを次々と繰り出し、
一時間余りノンストップで歌い、踊るというハードなステージ。
平場のスタジオにたくさんの観客を集めて行われました。
「ダンス」試演会と銘打つだけあって、
繰り広げられるダンスの種類の豊富さにまずびっくり。
バレエ「くるみ割り人形」の「花のワルツ」から始まり、
ロックンロールやジャズダンス、タップからコンテンポラリーまで、
ひと口にダンスといっても、さまざまなジャンルを要求されるのがミュージカル、と
改めて実感した。
もちろん、入学前にバレエやタップなどをお稽古してきた人が多いのだが、
関係者の話では、
はじめはほとんど踊れなかったような人もいたらしく、
それでこれだけそろった群舞ができるというのは、
(だって誰が「その人」なのかわからない!)
4期生全体の団結とモチベーションの強さ、
そして何より指導者たちの腕と意気込みの高さあってこそだろう。
今の若者たちに、自分の限界を超えるハードルを掲げ、
そこに向かって死ぬほど努力させるって、ものすごく難しいことだと思う。
それができたということは、
やるほうも、やらせるほうも、「マジ」という証拠である。
このダイジョースタジオ、
試演会は3階で行われたのだが、
同じ時間、階下では「レベッカ」など東宝の次回作のけいこが同時進行。
今、日本のミュージカルを支えているスタッフたちが、
若い才能を見出し、伸ばそうと、
「本気」で取り組んでいるということを、
私はTMAの試演会に来るたびに実感する。
ではこの中から、未来のスターは生まれるのだろうか?
彼らの群舞は素晴らしく、コーラスもよくそろっていた。
その意味では、
いわゆる「コーラスライン」より後ろの人々として、
みな一定の力を獲得した、といえるだろう。
かつて「モーツァルト!」を帝劇で観たとき背筋が震えたことがあった。
市村、山口、香寿など、並み居る大物も混じった大団円のコーラスの中に、
突如分け入ってきた井上芳雄の声。
コーラスに負けない、コーラスとは異なる、コーラスから浮かび上がる、
それだけは「特別」に響く声。
劇場を轟かすような声量があり、かつ声質に「品」がある。
それが、ミュージカルの主役の声というものだ、と感動したものだ。
残念ながら、
そういう声の持ち主は非常に少なかった。
今回は「ダンス」がメインなので、
歌の得意な人をフィーチャーするつくりではなかったかもしれない。
けれど、
マイクなしで大声を張り上げるという状況もあいまって、
ノドだけで歌って声が割れて汚かったり、
平面的で奥行きのない歌声の人が多かった。
試演会「Nine」で、いい声だな、と思った人でも、
今回のように大勢の中に入って歌いだすと、かき消されてしまう。
今のミュージカルはマイク付きで行われるので、
どうにでもなるといえばなるのかもしれないけれど、
マイクなしでも会場を席捲するような声量は、前提としてやはりほしい。
だって「ミュージカル」なんだもの。
オペラと同じ。まずは歌が命。
もちろん、完成されてなくていい。
彼らは「これから」の人だから。
ただ、「これから」を予感させてほしかったのだ。
一人、塩坪数馬はよく通る、太い声をしていた。
彼はソロで説得力のある歌を歌える素養としての声量を持つ。
試演会「墨東綺譚」では、台詞の声もよく響いていた。
女性では、
前回の試演会「Nine」でリリアンを演じ、
今回もやはり「フォリ・ベルジェール」を歌った岡井結花が、
全体で見て一抜け。
ダンス・歌ともに洗練されている。
私が観たものは姉御肌の役が多かったが、
かよわい女性など、まったく異なるキャラクターを担ったとき、
どんな演技をするのか見てみたい。
同じく「NIne」でサラギナ役をやった菅原奈月も、
目ヂカラのあるエキゾチックな瞳と粋なダンスで目をひく。
ただ彼女は自分の色をすでに作ってしまっている傾向があり、
それは武器であるとともに場合によっては枷にならないかがちょっと心配。
これからさまざまなプロダクションで歌い、踊るときに、
ニュートラルを要求された場合、うまく適応できるよう期待する。
そして、
「Nine」のカルラ役をやった豊城礼。
とにかく彼女は長身と日本人離れした体格をもっている。
それだけで、まずミュージカル舞台向きだ。
長年バレエをやってきたことで、
バレエ以外の動きでも体の線や手指の先が美しい。
歌は、
時折ツボにはまると爆発的にいい声を出す。
これだけの声量を保てる強靭な声帯をしているのに、
のどをつめて発声するくせがあり、非常に損をしている。
「今使える」とは思えないが、
努力によっては大化けする可能性を、私は感じる。
彼女には華がある。
今回、彼女はバレエに歌に、ソロのパートが多かった。
それで目立ったという部分もあろうが、
ほかの4期生がほとんど小柄で細いため、
「ボン・キュッ・ボン!」なカラダがひときわ目をひくのも事実。
これが彼女の大きな魅力であることは、たしか。しかし一方で、
まだプロの体型とは言いがたい。
逆に言えば、まだしぼれる、ということが、彼女の可能性でもある。
練習を積んで積んでプロの体型になり、
体はしぼっても声帯はその太さを生かし、
台詞や、小声で歌うところでもしっかり会場のうしろまで届く歌唱法を獲得すれば、
きっと歌って踊れるミュージカルスターになるだろう。
3月20,21日には、4期生の卒業公演「レ・ミゼラブル」がある。
今回の試演会では自分のよさを出しきれなかった生徒も含め、全員が
卒業公演には足を運ぶプロダクションの人たちに
ここで「おっ、あのコはいいな」とアピールできるとよいと思う。
がんば!

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