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2つの「モーツァルト!」@帝国劇場

今年、初めて「モーツァルト!」のライブ盤DVDが出ます。
パターンは2つ。
⑴井上/ソニン/香寿チームと
⑵山崎/平野/春野チーム。
山口、市村、吉野ほかはシングルキャストです。
今年で井上くんは卒業だし、
ソニンは大好きだし、
香寿さんの「空から降る金」は絶品だし、
だから⑴を劇場で予約するつもりで行ったのですが・・・。
その場では買わずに、
もう一度、別バージョンの日のチケットを買いました。
まずは、
最初観た日の市村さんの調子が悪かった。
初日あいて10日は経っていましたが、
楽までもつのかと心配になるほど、声が出てなかった。
腹から出てない。音程がとれない。
その上、細かい感情が表現として表れていない。
やっぱり大病は身体をむしばんだか、と天を呪いました。
だから2回目、
すっかり元通りのパフォーマンスになっていたのがほんとにうれしかった。
やっぱり舞台はみずもの。
一度だけで判断しちゃいけないんだなー。と思いました。
山口さんも、市村さんに引きずられたか、2回目のほうがよかった。
吉野さんは逆で、2回目は少し声の調子が悪かった。
ナンネールとして初参加の花總まりさんは、
1度目に比べ、2度目が素晴らしくなっていたので、とても安心しました。
高橋由美子さんのナンネールの印象が強いですが、
それとは違う味を出しつつも、2回目は自分の歌として歌っていました。
ソニンは大好きだけれど、
私は平野さんのコンスタンツェのほうが好みだった。
私が観たときのソニンコンスは、
「何もできない」「自分で道を切り拓けない」「なまけもの」な女に見えなかった。
井上モーツァルトを食うほどパワフルでエモーショナル、
一人で人生切り拓いていくタイプの女性に見えたのだ。
「モーツァルトとコンスタンツェは天才と凡人の開きがあるも、
 怠け者で遊びに浸りやすいところでは同じ魂の合わせ鏡、
 だからなんとなくシンパシーを感じる」という大前提に
ソニンは合ってないような気がして違和感があった。
もちろん好みの問題だし、
井上/ソニンではなく、山崎/ソニンだったらまた違ったのかもしれないけれど。
平野コンスはソニンに比べると自然で、流される女をうまく演じていたと思う。
ウェーバーの一家は海千山千で生きてきて、
コンス一人がいい子ちゃんなわけじゃない。
不満があっても一家で生きていかなくちゃならなかった弱さというか、
長いものに巻かれちゃうフラフラしたところが
平野コンスのほうにはあった。
でも、
私は2010年の島袋寛子のコンスが好きだなー。
あの蓮っ葉さ、頭の悪い子ちゃん加減は、
ノーブルな声を持つ平野さんではなかなか出せない。
さて。
肝心のモーツァルト。
私は井上芳雄が大好きだけれど、
今回は圧倒的に山崎育三郎のモーツァルトに揺さぶられた。
2010年の山崎くんがやりたかったことが、
今回パワーアップして、ブラッシュアップして、表現されている。
彼の中にある「子どものままの自分」が、「ありのままを愛してほしい」と訴えている。
「子どものままの自分」は、いわゆる「アマデ」ではない。
天才アマデに子ども時代を奪われてしまった、何者でもない自分。
「才能でもなく成功でもなく愛情でもない」ほしかったものは、
ただ家族と一緒に笑い戯れるひとときだったのだ。
だから山崎モーツァルトは、母親が死んだときと父親が死んだときに錯乱する。
そして、憎しみの眼でアマデをみつめ、あるいは「悪魔!」とののしる。
その一方で、
自分が音楽が好きっていう気持ちを大事にしたかったし、
その気持ちを形にしたかったんだなーっていうそこがせつない。
2010年の公演同様、あるいはそれ以上、
男爵夫人(の亡霊)にさとされて音楽にまい進しなければと思いあたり、
「オトナの男」になったときの変わり目が素晴らしい。
レクイエムを「自分の力でで仕上げるのだ!」と言われ、
初めて作曲の場でアマデを拒否ることの意味もわかる。
そして、
そのために、コンスタンツェという「幸せ」も逃げていくから、
ピアノの上に突っ伏すわけだ。
今度は、誰のせいでもなく、自分の選択として、
彼は凡人の「幸せ」を手放した。
今回のラストシーン、
モーツァルトは本当に「野たれ死んだ」という荒涼感があった。
私たちがどんなにモーツァルトを天才を呼ぼうが、
優れた楽曲が万人を幸せにしようが、
モーツァルトは不幸だった。
ほしいものは何も手に入れられず、死んだ。
それでも書かずにはいられない。
自分の中には「子どものままの自分」のほかに「アマデ」も存在するのだから。
若くして天才と呼ばれる人々の苦悩をあますところなく描いたこの作品を、
山崎モーツァルトは熱演している。
井上モーツァルトに関しては、
私の観た日は声が割れていて、乱暴だった。
声だけでなく、感情が乱暴だったように思う。
もっとよいコンディションのときに観たかった。
帝国劇場では24日まで、
梅田劇場では来年1月3日から15日まで。
私は⑵のDVDを予約しました。

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