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「ヘンリー六世」@新国立劇場(2) 

午前11時から始まった三部通しの舞台「ヘンリー六世」
3時間やって1時間休むペースで11:00、15:00、19:00と始まり、
最後はなんと、22:20終了予定という、
もうほとんど12時間の長丁場でありまして、
椅子の具合もあるのか、最後はお尻が痛かったです。
舞台は島次郎さん。
前方の席は取り払われていて、
最前列は9列くらいから始まります。
せり出した部分の上手前方には池。
この池がものすごく効果的に使われていました。
上からやぐらが降りてきたり、
照明とか布とかでの場面転換もメリハリがあって、
飽きませんでした。
昨日、第一部、第二部の速報はしましたが、
その後の第三部は、
リチャード(後のリチャード三世)役の岡本健一がよかったです。
ヘンリー六世のお后・マーガレット役の中嶋朋子もうまい。
いわゆる悪女ですが、
悪女なりに一本芯が通っていて、説得力がありました。
肉食モードの人々に囲まれて、
一人草食系男子のヘンリー六世を、
浦井くん、透き通った演技でうまく表現していました。
「だってボク、争いごとはキライ」っていうその優柔不断さが
ときの国王としてはサイテーだったかもしれないけど、
人間としては心情がとてもよくわかった。
ただの「臆病者」じゃないってことが。
全体を通して、
ほかに村井国夫もよかったし、
立川三貴も、バタ臭い顔をさらにデフォルメして怪演。
何役もこなしつつ、どの役も忘れられないインパクトです。
キーパーソンのウォリック役・上杉祥三、
権力の亡者にして生臭坊主・ボーフォートの勝部演之、
ジャンヌ・ダルクからヘンリー六世の息子まで演ったソニン、
数え上げれば結局「全員よかった」になってしまう。
本当に、全員よかった。
ていうか、
パンフレットに鵜山さんが
「昭和の舞台を駆け抜け、新たに平成の舞台を支える、
 愉快でたくましく、頑固で寛容、懐かしくまた新鮮な総勢38名の役者たち」
という俳優陣への形容が
ものすごくあてはまっています。
8月末から2ヵ月半という、ふつうよりかなり長い稽古期間ともあいまって、
彼らは演劇への愛情をたっぷり注ぎ込み、上演の日を迎えた感あり。
「ちゃんとした演劇ってこういうものなんだよ」
文学座、俳優座、青年座、青年劇場、NLT、円、民藝、前進座、昴、
その他四季やニナガワ・スタジオ、東宝ミュージカルなども含め、
「ちゃんとした」演劇を学び、経験を積んできた人々が私たちにくれた
プレゼントです。
老いも若きも、脂ののりきった者もこれからの者も、
シェイクスピアの情熱のイタコとなって、
イギリスとフランスの百年戦争および薔薇戦争の歴史を
本当にわかりやすく教えてくれました。
小田島さんが、
「戯曲を読んだだけではいまひとつだったのが、
 演じたのを見たらものすごく面白かった」と記者会見でおっしゃっていましたが、
たくさんのエドワード、たくさんのリチャード、たくさんのヘンリーが出てきて
グチャグチャになるかと思ったら、
すごくわかりやすかった。
白薔薇、赤薔薇を胸につけるやり方も、
敵が味方に味方が敵に、コロコロ変わる話なので、
そのときの位置が明確でよかったです。
初日は27日でしたが、
31日は始めての通し舞台ということもあったのか、
客席には
今回使った翻訳の小田島雄志さんだけでなく、
やはりシェイクスピア劇の翻訳といえばこの人、という松岡和子さんの
姿もありました。
演劇評論家の扇田昭彦さん、
女優の紺野美紗子さんのお姿も。(若い、ナチュラル、きれい!)
「コースト・オブ・ユートピア」のときも感じましたが、
観客の年齢層、はんぱなく高いです。
10時間なのに。
観るほうも、演るほうも、老人力っていいますか、年輪力っていいますか、
あなどれません!
考えてみると、
最近一日かけての観劇することが多いんですよ、私も。
歌舞伎も昼夜通しだと、11:00~21:30くらいなんで。
(それに比べたって、今回の約12時間っていうのはちょっと…)
エレベーターもない歌舞伎座の3階席に、
杖をつきつき一段ずつのぼってくるお年寄りも多く、
「観たい」と思う心に年齢や体力なんて関係ないんだとつくづく思います。
軽薄短小がもてはやされていた時代が長く続いています。
でも、すべてが「お手軽」になった今だからこそ、
こんな重厚長大な娯楽を、人はずっと求め続けていたのかもしれません。
潮目の変化を感じます。
休憩時間、小田島さんとお話する機会を得ました。
「鵜山くんはここ(新国立)の芸術監督に決まったときから、
 『ヘンリー六世』をやりたいって言っていたんですよ。
 ボクは、人が集まんないよって言ったんだけど、
 でも今日もソールドアウトだったっていうから、ねえ」
うれしい誤算にとても満足げな表情でした。
「稽古も何度も見ているんだけど、何度観ても面白いんだ」
よい本とは、人間がきちんと描かれている本だ、と、よくいいます。
14世紀や15世紀という、500年以上前の、
遠いイギリスやフランスの、
それも貴族たちの覇権争いという
今の私たちとはまったくかけ離れた話でありながら、
どの人間にも共感できる。
今の私たちと、同じ感情が彼らにはある。
それを、
若きシェイクスピアはこの長大な物語の中にしっかり入れ込んだ。
500年も、そしてこの先500年たっても
きっと共感できるような普遍的な人間の感情を。
この作品を観たあとに「リチャード三世」を観ると、
また感じ方が変わると思います。
登場人物の、人生の厚みが透けて見えるようになるので。
それにしても。
三月には蜷川幸雄演出で同じ「ヘンリー六世」を
また三部通しでやるんですよね。
小田島さん、
たしか「皆既日食よりマレ」だったんじゃなかったですか?(笑)。
やっぱり来てますね。
「本格演劇」の潮流。

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