映画・演劇・本・テレビ、なんでも感動、なんでもレビュー!

  1. 舞台
  2. 22 view

「桜姫」(現代版)

歌舞伎が下敷きだとか、南米だからガルシア・マルケスっぽいとか、
そういう先入観をすべてとっぱらって、
かの不思議ワールドに素直に没入しよう。
そこは、
いうなれば「天井桟敷の人々」のような世界。
天下の大どろぼう通りがあって、
訳知りの墓守男女が人々の運命の糸をぐるぐると操り、
宗教の偽善は見破られ、
処女の純潔も仮面でしかなく、
見世物小屋では人がマングースと化して蛇に噛み付き、
ある人は恨みゆえに人生を棒に振り、
ある人はすがる愛を間違え、
それが愛なのか性なのか、生なのか死なのか、
砂漠の中に愛の蜃気楼をみつけては逃げ水に絶望し、
めぐる因果の糸車に憎しみよりも縁を感じ、
そして音楽隊がすべてを水に流して歩いてゆく。
貧乏と死の縁で生きようとする、
生きようとすると死が覆いかぶさる、
泥まみれだけど美しい、人間賛歌の物語。
古田新太と秋山菜津子のカップルが異彩を放つ。
白井晃の思い込みの強さに現代性を感じる。
笹野嵩史の冷徹な笑いとトランペットの音色が強烈。
勘三郎の大人のエロスに背筋が震える。
惜しむらくは、
大竹しのぶが主人公の桜姫より
笹野嵩史とともに扮した墓守の印象のほうが強かったこと。
それだけ、
「桜姫」というキャラクターは複雑怪奇ということか。
一筋縄では観客を納得させられない。
そう、
ガランスのような吸い込まれ食い尽くされる官能美が
大竹には足りなかったかもしれない。
「桜姫」は現代版と歌舞伎版の競演。
七月には歌舞伎版の「桜姫」公演が続く。
桜姫は七之助だ。
鶴屋南北の世界を、堪能したい。

舞台の最近記事

  1. 内博貴主演「シェイクスピア物語」

  2. 演劇界休刊の衝撃

  3. 動画配信を始めました。

  4. 「桜姫〜燃焦旋律隊殺於焼跡」@吉祥寺シアター

  5. 8月・カンゲキのまとめ

関連記事

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。


Warning: Undefined variable $user_ID in /home/nakanomari/gamzatti.com/public_html/wp-content/themes/zero_tcd055/comments.php on line 145

PAGE TOP