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発言させたくない男たち@新国立劇場

昨年から続いている、
新国立劇場芸術監督再任問題について、
永井愛、井上ひさし、蜷川幸雄、松岡和子など著名な演劇人たちが
6月19日、新宿において
「新国立劇場の自省と再生を願う演劇人の声明」を発表しました。
昨年7月の「芸術監督選定プロセスの詳細開示を求める声明」・
「芸術監督選定プロセスの詳細開示を、再度求める声明」に続き、
三度目となります。
その会見のもようは、演劇情報サイト・ステージウェブでほぼ全部が見られます。
この問題に少しでも興味がある人は、
ぜひ、ぜひこの動画をすべて見てほしいと思います。
(発言者が交代するなどのタイミングで、いくつかに区切られています)
「なんだか、新国立って、もめてるらしいよ」程度の認識から脱却し、
ここで繰り広げられていることに、
一人でも多くの人が関心を抱くことこそが、
とても必要なことだと感じました。
とくに、
「今日は永井愛を一人にしない、その一念でここに来ました」という
新国立の評議員でもある松岡さんの
「たかが劇場のことで、著名な人たちが沈黙してしまう、
この沈黙と黙認とがこわい」という発言は、
心に刻んでおかねばなりません。
それにしても、
永井さんが理事会のメモを外部に公表したことに関し、
新国立サイドが「守秘義務違反」としたことについて、
永井さんが
自分にどういう守秘義務が規定されているか質問状を出したところ、
新国立から「守秘義務は(どこにも)ない」と回答があり、
しかし「ないけどある」といわれた、というくだりには、
もう、失笑するしかありません。
失笑というか、爆笑の場面も多々あり。
とくに理事会のもようをみんなに見てもらいたかった、という永井さんが
実況中継風に伝えるところは、
ほとんど彼女の戯曲「歌わせたい男たち」をほうふつとさせます。
(男たち、といっても、この問題の場合は女性も含まれてますけどね)
井上さんは「永井さんはこれをいい芝居にするしかないんだよ」というし、
永井さんも「今考えれば爆笑よ」とはいうものの、
その理事会に身を置いていたその瞬間は「こわい」と恐怖を感じたといいます。
もう一度いいます。
会見のすべてを見てほしい。
そこにいる演劇人の語る危機感を、そして使命感を
その目で、耳で、確認してほしい。
永井さんは、理事を辞任しました。
先に辞任した小田島さんが、
その理事会が終わったと同時に辞任を申し出たという昨年3月の理事会で
「僕は、みんなが、芝居が好きで、今話し合いをしている、と信じたい」と
しぼり出すように発言した、という
そのことをとても哀しく聞きました。
そして反省。
小田島さんが辞任したというニュースを聴いたとき、
私は「どうして永井さんを一人にしちゃったんだろう?」と
ちょっと憤慨してしまっていたから。
本当に傷ついたんだな、小田島さん。
自分の行為も、言葉も、捻じ曲げられて伝えられ、
ものすごく傷ついて、憤死寸前だったということを、
この会見を全部聴いて感じました。
松岡さんの
「(新国立側は)この問題をなかったことにしようとしている。
 私は(シェイクスピアという)400年前のものを訳しているが、
 時が経ったとき、この問題がどう残るのか。
 声明に対して謝罪や釈明があれば一番わかりやすい解決だが、
 そうならなかった場合、私たちはいい続けなければならない。
 そして、それを(ジャーナリズムは)書いてほしい」
という言葉が、心に残ります。
翻って、今、私にできること。
書くこと、伝えること、広めること、残すこと。
疑問を持ったことを口にしただけの人を、
「なぜ」「どうして」と声を挙げた人を、
一人でも「反対」と言える人を、
決して見殺しにしないこと。

*この問題の経緯については、
 演劇情報サイト・ステージウェブに貼ってあるリンク先をたどることで、
ほぼ全容がわかります。
*井上さんは永井さんを「ジャンヌ・ダルク」と言ったけれど、
 坂手さんが言った「不思議の国のアリス」が言いえて妙でした。

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