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「迷子の音楽隊」

昨日に続いて、東京国際映画祭関連。
今日は「迷子の警察音楽隊」。
今年のカンヌ国際映画祭で「ある視点」部門“ひと目惚れ”賞などを獲得した映画です。
イスラエルのアラブ文化センター開設式に招待された
エジプトの警察音楽隊が、
到着早々「迷子」になってしまった一日を描いた小品。
もちろん、「イスラエル」と「アラブ」がこの映画のキーワードです。
でも、映画の中に「戸惑い」はあっても、「憎悪」や「対立」はありません。
ある意味、「夜の上海」と同じく、
「言葉が通じない」人たちのコミュニケーションの物語です。
関口知宏の列車でめぐる中国の旅と同じく、
「国と国がどうあれ、人と人が触れ合えば、そこに親愛が生まれる」という話です。
この映画に関わったキャスト・スタッフの多くが
「アラブ系ユダヤ人」だということは、
私にとって新しい発見でした。
イスラエルの建国当時は、まずヨーロッパ系のユダヤ人が「帰還」したが、
その後は、周辺のアラブ社会に住んでいたアラブ系のユダヤ人が入ってきた。
先に国の方向を決めていたヨーロッパ系の人々は、アラブ・イスラム系の文化を嫌い、
アラブ系の人々に、生活習慣を捨てるようにさせた時期があったのだといいます。
彼らは、イスラエルの中では二級市民、
アラブ社会に行けばパスポートからイスラエル人という
非常にやるせない立場に甘んじているのだというのです。
家ではアラビア語を話し、外ではヘブライ語を話す、という家庭が
イスラエルにはたくさん存在するということを、まったく知らなかった!
文化の混在は、民族の混在とイコールだと思い込んでいたから。
イスラエルにいて、エジプトの映画をテレビで観るのが楽しみだった人たち。
エジプトの音楽が大好きな人たち。
彼らの目から見た、イスラエルとアラブが、
この映画の中に現れています。
荒涼とした、一面何もない大地に、そこだけ整地された近代的なハイウェイ。
そんなイスラエルの片隅の町と、
クレオパトラの時代から繁栄してきたアレキサンドリアという大都市からきた音楽隊と。
そんな対比も、意識的なものかもしれません。
言葉の違う人々が、片言の英語を使って、懸命に心を通じ合わせようとする。
子どもを思う心、音楽に感動する心、人を愛する心。
そんなものに、民族も国境もないことを描いた作品です。
迷子の警察音楽隊」ロードショーは12月中旬から。
有楽町にできる、新しいシネカノンだそうです。

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